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(まぁ、結果的に)
不都合な事象は今のところ起きていないのだけれど、と思ったその時、すっかり身支度を整えた義晴が姿を現し、一時的に思考を停止させた。
「入り口でお待ちください。 車を回してきます」
「ああ」
来た時と同じスーツに身を包んだ義晴から荷物を預かると、定国はさっと踵を返し、地下駐車場へと向かった。
(ただ、これから)
地下駐車場へ向かう道すがら、一度は考えることを止めていたことに立ち返った定国は、きゅっと目袋に力を込め、胸の中でそう呟く。
…もしかしたら、これから、少々厄介なことが起こり得るかもしれない。
けれどそれはまだ、定国が思い描いているだけの懸念でしかない。
その証拠に、義晴も優貴も、今のところ何の不協和音も奏でないばかりか、お互いのことを良く想っているのは確かだ。
だからこの先、そんな二人がどんなベクトルに乗り向かって行くのかは、今は定国の、想像の枠を越えない状況にある。
それでも今は、義晴の傍に優貴がいてくれなくてはならないと感じているし、恐らく義晴もそう思っているだろう。
ただ…
ふと定国は、思いを巡らせてしまう。
優貴は、どう思っているんだろう?
と。
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