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「……」
(ホントに)
何を考えているのか分からない人だよな、と思いながら、手にしていた洗濯物をウォーキングクローゼットの中に仕舞い込む。
といっても、義晴が身につけているシャツや服という物は『普通に洗濯できない』物ばかりである。
だから、こうしてたまに優貴が着ている物と一緒に洗濯できるものといえば、その下着ばかりなのだが、
『どうして洗濯しない?』
と、一枚ウン十万もするシャツを優貴に向かって放り投げた義晴の顔を見た時には、
『実家に帰らさせていただきますッ!』
と、半泣きさせられた日の記憶が懐かしく思えるから、不思議だ。
スーツは一着数百万円、
履いている靴も同等の金額、
ネクタイ一本にしても、数十万円もする物を身につけているというのに。
リビングといわず、衣服やアクセサリをいつも廊下に脱ぎ散らかし、怠惰な生活態度しか見たことのない優貴からすれば、
『大型犬=優貴がいる』
ことを言い訳にしなくてもいいんじゃない? という気が、しなくもなかった。
あんなだらしない格好見せられたら、百年の恋だって冷めちゃうよ、と思いながら再び義晴の側に近づいた優貴は、その高い鼻梁に細くしなやかな指先を近づけ、きゅっ、と、つまみ上げた。
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