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プロローグ
僕が住むセントラル街では、クリスタルの列車が空を走る。ビルとビルの間を、波打つようにぐんぐんと進む。
誰が見たってカッコ良いと叫ぶに違いない、空飛ぶ列車だ。
空飛ぶ列車の中では、昨年大ヒットを記録したアニメ映画『不死鳥のヒーロー』のテーマソングが流れている。
耳に残って離れない、陽気な音楽。
列車内だけじゃない。父親と手を繋いで街を歩く男の子の鼻歌、イタリアンレストランの店内、おもちゃ屋さんの小さなオルゴール。あらゆる場所で流れている。
~♪
Got your back
しんぱいは、いらないさ
Got your back
いなくなったりなんて、しないから
悲しくても、笑っていて
じゃなけりゃ、僕が笑わせる
つらくても、信じていて
じゃなけりゃ、僕が信じてる
だから上をむいて
こわがらなくて、いいから
不死鳥のヒーローは、どんなに強い敵が相手でも立ち向かう。まるで、沈んでも毎朝昇る太陽のように、人々を守り抜く。
まさに「永遠の時を生きる」といわれる伝説の不死鳥。
たくましくカッコ良いヒーローなんだ。
ここ、セントラル街に住むひとりひとりが、アニメのキャラクターである彼をフィクションとして愛し、歌を奏でていたのだけど――、
不死鳥のヒーローは、この世界に実在した。
この物語は、小学4年生の僕が不死鳥のヒーローと出会い、失踪した父さんを助け、世界中の人々を救う冒険の物語だ。
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