雨の日の訪問者

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 雨が嫌いだ。 俺はホームセンターとガソリンスタンドでバイトしながら資格の勉強をしていて一軒家でひとり暮らしの、志田幹人(しだ みきと)、ハタチ。 雨はジメジメしていて服も靴も濡れて髪はセットしてもすぐにくずれるし、なによりあの日も雨の日だった。  今から1年前ほど前。 父さんと母さんが事故にあって死んだ。 両親は用事があり隣町に住む親戚の家に行くと行って出掛けた。俺も母さんに「幹人も来る?来るなら3人で帰りに何か食べて帰る?」と言っていたが、俺は友達と遊ぶからと断った。 本当は何もない。 でも、めんどくさい、と思って断った。17時頃には帰るから、そう母さんは言い出て行った。  時刻は17時前。電話があった。 俺は受話器を取ると両親が会いに行った親戚の佐野さんという人だった。何度か会ったことがある人だ。 「幹人君、突然ごめんね。あのね、ご両親が事故に遭ったんだ。おじさんの家のすぐ近くでね。衝突されて。 そこから隣町の篠田総合病院って分かるかな? そこに来て欲しいんだ。ひとりで来れるかい?迎えに行こうか?」 「大丈夫です。行けます」 佐野さんにそう伝えると、待ってるから、と佐野さんは電話を切った。  事故って?なんで?なんで?なんで? 電話での冷静さと心の中での焦り。 ふたつの交差する感情のまま俺は携帯と財布だけを手に家を出た。 免許を持っていない俺は自転車で行こうと自転車に手をかけた時に隣の家の栗田さん(父さんの幼馴染み)に声をかけられた。 「こんばんは、幹人君。どこかに出掛けるの?」 俺は父さんと母さんが事故に遭ったことを話したら、車で病院まで送ってくれた。 病院に着くと女の人に声をかけられた。その人は、佐野さんの奥さんで俺を待っててくれたようだった。 急いで両親の所に案内してくれた。 でも両親はすでに息を引き取っていた。 諸々の手続きは佐野さんや栗田さんや親戚の人たちがやってくれた。 俺は周りの助けで乗り切ることが出来た。    あれから1年ほど経った今でも雨は嫌いだ。 でも最近、雨の日に訪ねてくるやつがいる。 今日も雨だから、うん、やっぱりいる。 俺は庭に面した窓を開けた。 窓を開けると数センチだけど座れる幅がある。 「今日も来たのか?雨宿り?」 そこには、一匹の野良猫。 まだ子供な気がするが何歳だろう? 触れたことがないし、雄か雌かも分からない。 2ヶ月前の両親の一周忌の日から来るようになった。 雨の日は必ずここに来る。 だから雨の日はひとりじゃない、って感じる。 雨は嫌い。 だけど最近少し思う。 雨よ降れ、って。
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