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「……マリン」
「あ……」
両親を亡くした後、事あるごとにぐずっていたロナをマリンに重ねながら頭を撫でてやると、マリンは安堵した表情で目蓋を閉じた。
たとえ数千年生きていようが、魔王となろうとが、故人に会いたい、すがりたい気持ちは薄れやしない。
親や親のように慕っていた相手なら尚更だろう。
俺はそれを、よく知っている。
だから俺は、少しでもパンデモーナの代わりを務めてやろうと。
「今まで一人でよく頑張ったな、マリン。 偉いぞ」
「……うん」
それからもしばらくの間、俺はマリンの頭を撫で続けた。
彼女が満足するまで延々と。
「お、お見苦しい姿をお見せしました……出来たら忘れて貰えないかな。 お願い……」
無理難題を仰る。
数千歳に及ぶ魔王が、二十四歳の若造に頭を撫でられて至福の一時を満喫していたんだぞ。
どう忘れろと言うのか。
「出来たらな」
「むぅ……」
マリンは耳まで真っ赤にして頬を膨らます。
そこへ、宰相のエリックが帰ってきた。
「失礼致します」
「お帰り、エリック」
「……? ソーマ兄さん、姫様どうかなされたんですか? いささか様子がおかしいように感じますが」
「いやまあちょっとな。 それよりも、そっちはもう大丈夫なのか?」
尋ねるとエリックは優しく微笑み。
「おおむね、姫の思惑通りに事が進みました。 これもソーマ兄さんが手柄を渡していただいたお陰です」
「俺は自分の為にやっただけだ。 気にすんな。 それに、報酬も沢山貰ったしな」
言いながら、俺はテーブルに大量に転がっている金貨を一枚拾い、指で弾いた。
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