2. 遅すぎる謝罪

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2. 遅すぎる謝罪

 支倉建設本社ビルの一階には、大手のコンビニエンスストアがテナント出店している。店内には会社のエントランスホールから直接入店することも出来るし、ビル前の表通りから入店することも出来るので、支倉建設の社員にも近隣のオフィスに勤務する会社員にも非常に重宝されている。  午後七時を少し過ぎた頃。そのコンビニエンスストアのレジ前に立った七海は、ホットスナックが並べられた商品ケースの中を覗いて「あ」と小さな声をあげた。 (肉まん、売り切れてる)  七海の目当ての商品は、蒸気でほかほかに温められたふんわりと生地とゴロゴロ肉が美味しい『肉まん』だった。  将斗に伴って夕方から都内の取引先に赴いていた七海だったが、話し合いが長引いたせいでかなり遅い時間の帰社となってしまった。  商談はざっくりとはまとまったが、今日の交渉で決定した条件や予算、細かい内容を各部署に通達したうえで再検討させ、さらにその情報を盛り込んだ建築プランを先方に再提出しなければならない。  将斗の曽祖父の代から懇意にしている取引先のため将斗が直接出向いたが、相手の要望をより明確に組み込んだ設計やプラン作りのためにはまだまだ調整が必要だ。そのためには各部署に所属するそれぞれのプロフェッショナルの意見も取り入れなくてはならない。
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