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帰社したらすぐにでも見直し作業を開始する、と珍しく残業する気の将斗に付き合うこと自体は、七海もやぶさかでない。
ただこの時間になるとどうしてもお腹が減る。だから『帰ったらコンビニの肉まんを食べる時間だけください』と申告すると、将斗に『俺もそれ食いたい』と言われてしまったのだ。
もちろん将斗だって中華まんぐらい食べるだろう。だが中華街にある行きつけ店や点心専門の料理人の作った中華まんしか食べたことがなさそうな将斗の口に、果たしてコンビニの安い肉まんが合うだろうか、と思う。
しかし将斗本人は七海と同じものを所望しているので、とりあえず彼の分も購入していくことにする。先に戻ってる、という将斗とエントランスで一旦別れた七海は、その足で一階のコンビニに向かった。
だがいざレジ前に設置された商品ケースを覗いてみると、肉まんだけがない。どうやらすでに完売したようだ。
ふう、とため息をついた七海は、肩にかけたバッグからスマートフォンを取り出すと、それを操作して将斗に電話発信する。七海の分だけならば独断で変更が可能だが、将斗の分も頼まれているので、彼に代替品の希望を聞かなければならない。
「社長、少々よろしいですか? 申し訳ありません、肉まんが売り切れてます」
『なんだ、ないのかよ』
すでに社長室に到着したらしい将斗がスマートフォン越しに文句を言う。ただし口調こそ不満そうだが声は比較的ご機嫌だ。
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