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だが将斗は彼らに対しても一切の遠慮がない。
「まあ、花嫁を置き去りにした花婿一家に、拒否する権利はないと思いますが」
ばっさりと切り捨てる将斗の言葉に、慎介の父がグウと言葉を詰まらせる。他人に指摘されて初めて、己の息子の非常識さを思い知ったのだろう。
とはいえジロジロと将斗を見つめる慎介の父の視線は、見ず知らずの他人に糾弾されるいわれはない、とでも言いたげだった。
「失礼ですが、あなたは一体……?」
「支倉建設代表取締役社長、支倉将斗と申します」
「取締役……? ……社長!?」
慎介の父も、ようやく目の前にいる人物の正体に気づいたらしい。
何を隠そう、支倉将斗は七海や稔郎、慎介が勤務する〝支倉建設〟の社長である。
支倉建設はオフィスビルや医療施設、商業施設といった規模の大きな建設事業から、マンションやアパート、個人の住宅や別荘といった細やかな建築事業、さらには都市開発事業や環境エネルギー事業まで幅広く手掛ける、日本屈指の総合建設会社だ。
そして秘書室に在籍する七海の現在の配属先こそが社長秘書――つまり七海と将斗は、出社から退社まで毎日のように行動を共にしている『ビジネスパートナー』なのだ。
「ご子息は柏木を置いて、別の女性とどこかへ行ってしまいましたよね?」
「そ、それは……」
「それなら異論はないはずです。彼女は、俺がもらいます」
「!」
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