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純白の装いと、美しい光景と、優美な音色。目の前で粛々と聖書の一部を読み上げている神父。二人を祝うために結婚式に参列してくれた多数のゲスト。すべてがつつがなく進行しているはずなのに、ちゃんと緊張もしているのに、どうしてだろう……何となく現実感がない。何かが抜け落ちているように感じてしまう。
(式のプランも、この後の披露宴の準備も、ちゃんと確認した……はず)
七海の心の隅に潜んでいる不思議な違和感。言葉に言い表せない引っ掛かり――それが突如として現実化したのは、誓いのキスをするために慎介がべールを外した直後だった。
膝を曲げて頭を下げていた七海が元の姿勢へ立ち上がった瞬間、チャペルの中に可愛らしい女性の声が響き渡った。
「ま……待ってっ!」
「!」
厳粛な空気を打ち破る思いもよらない発声に、弾かれたようにパッと顔を上げる。声がした方向へ顔を向けてみると、全員が整列して長椅子に着座する中、新郎のゲスト席の最後方で一人の女性が立ち上がっているのが目に入った。
(だ、誰……?)
年齢は同年代か少し年下だろうか。ベージュのパーティドレスに黒いショートボレロを羽織り、パールがあしらわれたカチューシャを頭にのせた小柄で可憐な女性が、なぜか目にうるうると涙を浮かべてこちらをじっと見つめている。
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