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「あなたが『龍王の愛し子』ですか?」
目の前の玉座に座る男が私の頭頂部から爪先まで瞳を上下させる。
外ではザーザーと滝のような雨が降っている。
男は静かに私を見つめる。
品定めをする、二つの黄金の瞳。
私はその瞳に嫌悪の念を抱く。
丁寧に手入れをされているであろう白金の御髪。
私はその髪に憎悪の念を抱く。
雨が降っていて良かったと思う。
でなければ、こんな空気が張り詰める空間に耳鳴りがして不快だっただろう。
雨音がそんな不快さを少しは軽減してくれる。
何故、私は此処にいるのだろうか。
『龍王の愛し子』
この国の人たちは私をそう呼ぶ。
龍王とは、この中央の国より最果ての東の島国、
私の母国で祀る水龍様のことである。
水龍様は水を司る龍神様で、私の母国の建国に大きく関わったとされる方である。
特に水龍様は天候を操る能力に優れ、その御力により国は発展した。
そんな水龍様の御力を受け賜ることができる者が、極稀に国で生まれる。
それが『龍王の愛し子』である。
愛し子たちには共通点がいくつか存在する。
・全てを飲み込むような漆黒の髪
・海のような青い瞳
・水を操る力
そして、この愛し子たちは歴代の権力者たちが喉から手が出るほど手に入れたいシロモノであった。
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