雨に祈れば

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 それぞれ役割があるらしくあっという間に祭りの準備が整った。  ばあちゃんの傘やレインコートも持ってきたのだが、ここでは不要のようだ。  恵みの雨を遮るなんてありえないのだ。  雨に濡れて体調を崩したりはしないのかと聞いたら、それがいいのだと彼らは言う。  邪気を払う意味でもそれはいいことだと思われているようだ。  皆、伝統の衣装に着替え地面に座り始めた。  便利な生活とは対照的だ。  それぞれが手作りのレインスティックを、雨よ降れと祈りを込めて傾け始めた。  ここではサボテンでも竹でもない高山植物が使われていて、ばあちゃんのレインスティックより優しい音が広がった。  僕たちにもレインスティックが渡された。  昔の人が作ったものも大切にしまわれていて、それを貸してくれたのだ。  そんな大切な道具を壊しては大変だと僕は少し躊躇したが、壊れるのも運命だから気にするなと言われた。
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