雨に祈れば

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 ばあちゃんは死を覚悟していたようで、家はきれいに整理されていてほとんど物が残っていなかった。  就職して三年、東京でひとり暮らしを始めたが、広がる感染症に一度も家に戻ることなくばあちゃんを逝かせてしまった。  オンラインでは顔も見たし話もよくしたが、久々に会った棺の中のばあちゃんは思っていたよりも小さかった。  ネットでは、自分の姿を加工することもできるので、きっと元気そうに見せていたに違いない。  ばあちゃんに感染させないために近づかないようにしていたのだが、後悔がじわっと心に広がっていった。  ばあちゃんの家は古びた日本家屋で広かったが、荷物が少ないのですぐに整理がついた。  残された遺品のすべてに行き先が記入されていてそれぞれ発送も終えた。  僕に残されたのは大きなつづらが一つ。  すべての作業を終えた後、ゆっくりと僕はつづらを開けた。
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