雨に祈れば

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 雨が止んだのは5日目の真夜中で、空には虹がかかっていた。  水遊びで虹を見たことはあるが、大きな虹は生まれて初めて見る。  夜にも虹が出るとは知らなかったと僕が言うと、彼らは首を振った。  これはただの虹ではなく、満月の明りでできるムーンボウと呼ばれるもので、めったに見れない神聖なものだと彼らは言った。     数年に一度見られるか見られないかの貴重なムーンボウを一度目で見られるなんてなんてラッキーだと何度も言われた 。  彼らはせっかく雨で洗い流されたのに、泥で汚れることもいとわず、再び地面に膝をつき、ムーンボウを仰ぎ祈りをささげた。  人の命を守ることはやはり必要だとは思うが、それ以上に自然を人が操作することは許されないという思いを僕は強くした。  雨のたびに儀式に参加し、一年後僕たちは予定通り帰国した。  帰りは何のトラブルもなかった。  もしかしたら、雨よ降れと神に祈った効果なのかもしれない。
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