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傘だ。
大小さまざまな傘や雨具などがぎゅうぎゅうに入っていた。
レインコートやレインシューズはテレビの中で見たことがあったが、竹筒が何に使うかわからない。
そっと手に取ると中で何かが動く気配がし、心地よい音が聞こえてきた。
僕はしばらく夢中になってその音を聞いていた。
そっと傾けるとパラパラと穏やかな音がし、勢いよく傾けるとザーザーと激しい音がした。
どちらもとてもいい音で、何度も竹筒を傾け続けた。
それは雨の音を再現したレインスティックというもので、本来はサボテンを乾燥させたもので作るらしい。
レインスティックの音はあの雨の体験施設で聞いた音とはまるで違った。
心を癒す音に、僕は夢中になった。
向いてない営業の仕事にまわされ、心も体もすり減っていた。
人との交流の少なくなった感染症が広がる世界で孤独を感じていた。
そんな僕の気持ちを洗い流すようにレインスティックは雨音を奏でてくれた。
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