雨に祈れば

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 僕たちが向かうモユアンテスという名のその国は、日本から半月かけてようやくたどり着くような場所にあった。  地図で見るとそう遠くはないのだが、直行便がなく四度も飛行機を乗り換えなければならない上に、そもそも便数が少ない。  さらにはモユアンテス自体には飛行場がなく、隣国からバスで16時間の移動となる。  そのバスも3日に一度しか出ないというのだから、飛行機と合わせて最短で10日だ。  高所にあるその国は、最後は徒歩しかないのだが、高山病の危険があるので何日もかけて登ることになる。  モユアンテスはこんな風に不便なところにあるが、文明の発達した近代的な国だ。  雨の技術を否定し、交通も郵便も厳しい土地柄から、古き良き国を想像してしまったが、我々が暮らす国とそう変わらないらしい。  少ないとはいえ、いくつもある雨の技術を否定した国の中からモユアンテスを選んだのには理由があった。  僕たちが雨の降る国に向かうことを知ったとある企業から連絡がきたのだ。  びっくりするほどの大手企業で、政府の依頼でモユアンテスと仕事をしているが、なかなか現地に向かってくれる人がいなくて困っていたようだ。
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