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そしてその年、私はお母さんと一緒に水子供養のできるお寺へと向かった。私は知らなかったけれど、毎年カンタが生まれた日にはこうして参っているそうだ。
「ねえ、お母さん。カンタは今どこにいるのかな」
「そうね。きっとカンナのすぐそばにいると思うわ」
「なんでわかるの?」
「昔、ここで教えてもらったの。小さくして亡くなった子どもはその姉弟を守るためにいつもそばにいるんだよって。だからきっと今もカンタはカンナのすぐそばにいるんじゃないかしら」
「そうなの? だったら嬉しいな……」
「うん。カッコよくいうと守護霊ってやつね」
「守護霊……なんか強そうだね!」
「そうよ、最強なんだから」
ねえ、カンタ。聞こえているかな?
あのとき、たくさん心配かけてごめんね。そして私のことを元気づけてくれてありがとう。一緒に過ごした時間は短かったけれど、毎日が本当に楽しかった。今はもうその姿を見ることはできないけれど、寂しくないよ。だってカンタがそばにいるって知っているから。
だからカンタ、これからは“お姉ちゃん”として、あらためてよろしくね。
そのとき、真上で太陽がキラリと輝いた。それはあの夏、カンタくんが見せてくれた眩しい笑顔のようで――弟が笑顔で応えてくれたのだと幼心に私はそう思った。
【夏、君に会いたくて…終】
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