傷ついた人

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傷ついた人

『乾杯、お疲れ様』 「おう、お疲れ」 仕事終わり、グラスを合わせてビールを流し込む 「羽水、何かあったのか?元気ねぇな」 『うん、明後日から本社へ出張なんだけどね…』 「本社って…」 『そう、事件現場…ふふ…』 無理矢理笑った羽水の顔は、儚くて消えてしまいそうだった 「断れないのか?」 『ん…もう昔の話だし、彼女は退職していないし…ね』 「でも、キツイんだろ?」 『どうだろう…』 一緒に行ければな…って俺が行ったところで何の役にも立たない 「無理すんなよ?」 『うん、大丈夫。後で君がギュッとしてくれたら耐えられるかも…なんてね』 「いいよ」 『え?いいの?』 「そんくらい、アンタにならできる」 『じゃあ、お願いしちゃおう』 「あと、キツくなったら電話しろ。メッセージでもいい」 『うん、そうするよ。ありがとう』 「あと…ギュッとしてやるから…」 『うん、ついでにキスもして?』 「…多分な」 『クスクス、冗談だよ?』 羽水は笑っていたけど… 笑ってなかった 胸が締め付けられて、この人を守ってやりたい そう思った
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