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「だからって…誰にでも触られていいわけないだろ?」
『そうだね、ありがとう…もう、行くね』
ここで、行かせてしまったら何かが終わりそう…で
俺は咄嗟にこの人の肩をグッと掴んだ
ビクッと身体を揺らし、振り返った眼は涙に濡れていた
俺は堪らず、細い身体を抱きしめた
『う…っ』
「泣くな…いや、今だけ泣いていい」
しばらく抱き合って、この人のしゃくりが止まったところで身体を離した
『ごめ…泣くつもりなんてなかったのに』
「誰にも言わないから、俺も何も見てないし何も知らない」
『それは…ちょっと寂しいかも』
「は?」
『クス、冗談だよ。ありがとう』
そう言って笑ったその人は
この世の何よりも綺麗だった
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