涙に濡れる人

1/2
前へ
/47ページ
次へ

涙に濡れる人

「おう、羽水…お疲れ様」 『っ…比山、課長…お疲れ様です…では…』 タバコの匂いはしない 「待てよ」 今来たばかりだろう? 俺は目も合わそうとしないこの人の腕を捕まえた 「おい、何で泣いてる…」 『何でもありません、離して』 大人気なくジタバタするこの人を胸に抱き込んだ 『っ…やめて…もうっ』 「何だ?どうしたんだ?言ってみろ」 『君が…恋をしているって…すごい噂で…』 「ああ…あれな、あれは」 『いいんだ、勝手に君が好きで、勝手に傷ついて、勝手に…』 「あー、もう、だから!アンタに遊んでるって思われたくなくて言っただけだったんだが…逆効果だった…か?」 『え?』 「だからさ、アンタにそんな顔させたくなくて…」 そこで俺は気づいた これって、俺がこの人を好きだって言ってるようなもんじゃないのか? 実際に、俺の腕の中のこの人は顔を真っ赤にして狼狽えている 『あのっ、それってさ…いや、勘違いしちゃうからそうゆうの…やめて』 はぁ…俺にもわかんね 「悪い…けど、本当にそう思ったんだ。アンタに遊んでるサイテー野郎だと思われたくなかった…何なんだろうな…自分でもわかんね」 『じゃあ、君が恋をしてるってのは?』
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加