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涙に濡れる人
「おう、羽水…お疲れ様」
『っ…比山、課長…お疲れ様です…では…』
タバコの匂いはしない
「待てよ」
今来たばかりだろう?
俺は目も合わそうとしないこの人の腕を捕まえた
「おい、何で泣いてる…」
『何でもありません、離して』
大人気なくジタバタするこの人を胸に抱き込んだ
『っ…やめて…もうっ』
「何だ?どうしたんだ?言ってみろ」
『君が…恋をしているって…すごい噂で…』
「ああ…あれな、あれは」
『いいんだ、勝手に君が好きで、勝手に傷ついて、勝手に…』
「あー、もう、だから!アンタに遊んでるって思われたくなくて言っただけだったんだが…逆効果だった…か?」
『え?』
「だからさ、アンタにそんな顔させたくなくて…」
そこで俺は気づいた
これって、俺がこの人を好きだって言ってるようなもんじゃないのか?
実際に、俺の腕の中のこの人は顔を真っ赤にして狼狽えている
『あのっ、それってさ…いや、勘違いしちゃうからそうゆうの…やめて』
はぁ…俺にもわかんね
「悪い…けど、本当にそう思ったんだ。アンタに遊んでるサイテー野郎だと思われたくなかった…何なんだろうな…自分でもわかんね」
『じゃあ、君が恋をしてるってのは?』
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