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最初、かあさんは迎えに来なかった。だから、何時間も何時間も待って、帰ってこないおれをかあさんは交番のおまわりさんと一緒に迎えに来た。誰もいない学校の出入口。そこで、ぽつんと佇んでいるおれを見て、かあさんは泣いた。
「りょうちゃん……っ、おそくなってごめんねぇ」
そう言って。
おれは、それで味をしめたのだ。待っていれば。帰らなければ、かあさんは迎えに来る。でも、毎日はさすがに可哀想だから、雨の日だけかあさんの迎えを待つことにしたのだ。
だから、あの日もおれは傘を持っていかなかった。雨はおれにとってうれしいものだった。大好きなかあさんが傘をさして迎えに来てくれる、最高の天気。あめふりは、おれにとって一日を楽しくしてくれる天からの贈り物だったのだ。
でも、あの日。
待てど暮らせど、かあさんは迎えに来なかった。正確には来られなくなった。おれを迎えに来る途中、かあさんはスリップしたトラックにはねられて死んだ。
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