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「りょうちゃん」
かあさんがおれを呼ぶ。うれしくて雨の中を駆け出せば、ランドセルが揺れて中で教科書や筆記具が音をたてた。
「おそくなってごめんね」
そう言っておれの手を握るかあさんの手は冷たく湿っていた。降り続く雨が、かあさんの赤い傘をどんどん濡らし、水滴がぽたりぽたりと落ちてくる。それが、おれの左肩を濡らし、かあさんは右肩をぐっしょりと濡らしている。
「──ねえ、あの子」
不意に後ろから声が聞こえた。振り向くと傘をさした女の人がふたり、おれとかあさんのほうをじっと見ていた。
「なんで、あの子……濡れてないの?」
ひそひそと交わされる会話。おれを奇妙なものでも見るように、女の人の目がぎょろりとこちらを凝視する。
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