あめふり

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 どうして、嘘をついたんだろう。かあさんが迎えに来るなんて。そんな約束はしていないし、連絡だってない。それでも、待っていれば、かあさんが迎えに来てくれるような気がしたんだ。  さっきまでは小降りだった雨が、ざあざあと降りはじめた。あちこちに水溜まりができている。ランドセルがずしりと重い。びゅうびゅうと風まで吹いてきて、冷たい雨粒が頬に当たった。  かあさんは来てくれるだろうか。  少しだけ不安になる。  でも、傘を忘れた日は必ず迎えに来てくれるから、約束も連絡もなくたっていいんだ。半ズボンの足がだんだんと冷えていく。 「りょうちゃん」  かあさんだった。赤い傘をさして小走りでこちらに向かってくる。 「おそくなってごめんね」  かあさんの傘は、もうぐっしょりと濡れていて、ポタポタ落ちるしずくが傘の赤を映して血のように見えた。おれの手を握るかあさんの手はとても冷たい。雨に濡れたのかぬるぬるしている。
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