あめふり

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 ハッと覚醒する。全身、汗でびっしょりだった。まるで、雨に濡れたように。枕元のスマホで時間を確認する。午前四時。外はまだ薄暗い。雨が降っているのだろう。室内の空気がじっとりと湿り、窓を叩く雨でカタカタと窓枠が鳴っている。  この季節はいつもこうだ。嫌な夢をみる。汗をかいたせいで喉がカラカラだ。ベッドをおりキッチンへと向かう。きちんと閉めたはずなのに、少しゆるかったのか蛇口からポトリポトリと水滴が落ちている。  ため息をこぼしながら蛇口をひねり、手のひらで水を受けてごくごくと飲みくだす。生温い水が喉を浸し、少しだけ気分がスッキリする。  二度寝する気にはなれなかった。寝てしまったら、またあの夢を見そうで怖い。小学校一年生の時の思い出。できるならマジックで塗り潰したい過去だ。  濡れた口を手の甲で拭い、寝室へ戻ろうとすると、また蛇口から水滴が落ちはじめた。ポトリ、ポトリ。まあるい粒が楕円に伸びて、シンクへと、ポトリ、ポトリ。それはまるで、傘からしたたる雨のようだった。
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