なんて可愛い私だけの存在

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なんて可愛い私だけの存在

 私の膝に猫がいる。  さっきまで私に撫でられながら、ごろごろと喉を鳴らしていた。今は気持ちよさそうに寝息を立てて眠っている。  ぽかぽかの午後。私はふわふわの毛並みを撫でている。いわゆる猫っ毛だ。猫なんだから当たり前なのはわかっている。でも、その毛並みの元になったものがなんであるかを私は知っている。ずっと前から私が知っていた感触。  カーテン越しの春の日差しに照らされて、彼女の毛並みは輝いている。 そっと撫でていると、眠りながらも彼女は喉を鳴らした。クリームパンみたいな手がぐっぱするように動く。甘えているしるしだ。 なんて可愛いのだろう。なんて愛おしいのだろう。  ペット可の賃貸を借りるために、駅近のマンションは諦めた。駅から歩いて三十分という微妙な立地だ。バスも一時間に一本しかない。けれど、後悔なんて全くしていない。彼女のためならばそれくらいなんということもない。  彼女が退屈しないようにキャットタワーだって天井に届くような大きなものを買った。  大学を卒業して働き始めたのは今年の春からだが、給料の多くを私は彼女のために注ぎ込んでいる。それでもいいと思う。私と彼女が幸せならば、なんの問題も無い。そのために働いているようなものなのだから。  彼女はどこにも行かない。私の側だけにいる。  仕事から帰って来たら出迎えてくれるし、私のあげたものだけを食べる。トイレの世話だって私に任せっぱなしだ。  すり寄ってくるときもあるし、そっぽを向くときもある。そういう全ての仕草が可愛い。  彼女らしい、と思う。  今も私のことを信頼しきった様子で、私の膝の上で無防備な姿をしている。  なんて可愛い私のためだけの存在。
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