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01. 私の知ってる幼馴染じゃない
「ええええ!?」
夢実現のためデザインの専門学校へ進学した、その登校初日。
目立つ行動は控えていたけど、こればかりは思わず席を立ち、声を上げてしまうのをどうか許して欲しい。
そう思っていた蛍の目線の先にいたのは、最後の自己紹介を済ませたばかりの、一人の可愛い女の子。
綺麗なピンクベージュの艶々ミディアムボムと、クリッとした瞳を飾る上向き睫毛が、魅力度をぐんと上げている。
何よりメイクの度合いも色合いも、自分に似合ったものを上手にチョイスしていて、文句のつけどころがないくらいに完璧な彼女は、誰が見てもお人形のように可愛いと声を揃えるだろう。
しかし、蛍だけは違った。
いや、先程までは自分もみんなと同じく、彼女の事を同じ人間とは思えないくらいに可愛い子だと思っていた。
だけどその気持ちは、自己紹介の順番が回ってきた彼女の、想像よりも少しだけ低い声と名前を知った途端に消え失せる。
「さ……佐倉葵、って……あの葵……?」
同じマンションに住んでいるにも関わらず、小学四年生の頃にあったアノ事件以来、口も聞かないまま中学校に上がり、そして別の高校へと進学した。
そんな経緯で疎遠になっていた幼馴染と、新たに進学した専門学校の、しかも同じクラスになるなんて――。
でも、そんなはずはない。
きっと同姓同名の赤の他人だと、蛍は未だに信じられずにいた。
「いや、人違い……、だって葵は……」
「久しぶりだね蛍、人違いなんかじゃないよ、あの葵だよ」
戸惑う蛍に、葵はニコリと満足げに微笑んで余計に混乱させてくる。
だって、蛍の知る幼馴染の佐倉葵という人間は。
蛍がこの世で唯一苦手とする、生物学的にいうところの。
“男の子”なのだから!
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