01. 私の知ってる幼馴染じゃない

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 それから間も無く、担任となったちょび髭の生えた先生が教室にやってくると、簡単に学校の設備や各階の説明などをしてくれた。 「卒業までの間、このクラスのメンバーで過ごしていくぞ。だから苦手な奴もいるだろうけどこれから自己紹介タイムー」 『え〜……』 「じゃあまず俺から、43歳あだ名はちょび先生、よろしくな〜」 「ちょび先生〜本名が抜けてま〜す!」  きっとちょび髭だからちょび先生というあだ名なのはわかっても、肝心の本名がわからないままのちょび先生。  その自己紹介に笑いながら指摘したのは、声をかけやすい前の席に座っていた玲だった。  しかしちょび先生はそんな事はお構い無しというように、じゃあ君から順番に〜と自己紹介のトップバッターに指定する。  仕方ないと立ち上がった玲は、持ち前の明るさと笑顔をクラスメイト全員に向けて、自己紹介を始めた。 「梶谷玲です! webデザイナー志望、フットワーク軽めなんで仲良くしてくださーい、よろしくお願いしまぁす」  蛍が陽キャと決めつけただけあって、玲の自己紹介はクラス全体の緊張感を解し、親しみやすさも覚えさせたほど。  教室内に響き渡る拍手の中さすがだなぁと感心していると、直ぐに自分の番がやってきた蛍が慌てて立ち上がる。 「な、中宮蛍です。グラフィックデザイナー志望です。よろしくお願いします」  どちらかというと人前で話すのは苦手なので、クラスメイトたちの目は直視出来ず、教室の後ろの方を見るようにしてテンプレな自己紹介を済ませた。  子供の頃は積極的で誰にでも気さくに話しかけられた蛍なのに、やはりあの事件がキッカケで前向きな行動や目立つ行動は避けるようになる。
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