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そんなふうに変わってしまった自分を少し悲しく思う蛍だったが、クラスメイトの拍手が優しく包み込んでくれた。
救われた気持ちを抱き控えめに微笑んで応えていると、ふと視界が捉えたのは。
教室の一番後ろの席から蛍をじっと見つめてくる、今朝同じバス停からここまで一緒だった、あの可愛い女の子。
「(え!? 同じクラス!?)」
そんな偶然があるのかと驚きながら席に着くと、続いて美貴の自己紹介が始まったのだか。
その間、変わらず視線を送ってくる女の子に蛍は戸惑いを隠せず、美貴の自己紹介を聞き流してしまった。
「(何で私を見てくるの、まさか向こうも私の事気づいてた?)」
通学ルートが始まりから終わりまで一緒なんて滅多にないだろうし、専門学校はもっと確率的に低いと思っている中。
同じバスに乗り、同じ学校に通い、同じクラスとなったあの女の子も、蛍の事を特別な存在であると認識したのだろうか。
「(だとしたら、仲良くなれると良いんだけど……)」
滅多にない偶然がいくつも起こった彼女にそんな感情を抱いたのち、気にしながらも自己紹介へと意識を向ける蛍。
目線は合わなくなった蛍を尚も見つめ続ける後ろの席の女の子は、実はもっともっと複雑で重い感情を抱いていることを。
蛍はまだ知らなかった。
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