01. 私の知ってる幼馴染じゃない

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「よし、次がラストだな」  ちょび先生が一言告げて、一番後ろの席に座っていた例の女の子がゆっくりと立ち上がった。  ピンクベージュの髪がサラッと肩を滑り、教室内の男子の、そのほとんどが彼女に見惚れている。  それは、蛍の前の席に座る陽キャの玲すらも――。 「めっちゃ可愛くね? タレント?」  と小さな声で呟いていたのだから、やはり男女問わず誰が見ても彼女の可愛さはずば抜けているのだ。  クラスメイト全員の視線が彼女に集まる中、息を吸った彼女の視線の先には、何故か蛍しか映し出されていなくて。 「(……また目が合った……?)」  まるで他の生徒は眼中にない、蛍だけにしか用はないという瞳をしていた。 「佐倉葵(さくらあおい)です、グラフィックデザイナー志望。よろしくお願いします」 「…………佐倉……葵?」  その名前を聞いた瞬間、瞬きも拍手を送るのも忘れた蛍は、葵という女の子の顔から目が離せなくなってしまっていた。  それは昔から馴染みのある名前のはずなのに、頭の中で情報処理が追いつかずただただ硬直する。  何故なら蛍の記憶に残っている佐倉葵は、臆病で優しくて可愛い顔をした、いつも一緒にいた幼馴染の、男の子。  しかし今視界に映し出されているのは、誰がどう見ても可愛らしい女の子で。  昔の記憶と見えている現実が一致してない事により、脳内でバグが発生していた。 「ええええ!?」  小学四年生のあの事件以来、疎遠になってしまった幼馴染の葵。  何がどうしてそうなったのかは全くわからない蛍だけど、それでも一つだけ確実に言えるのは。  超絶可愛い男の娘となって思いがけない再会を果たした葵と、18歳の春を共に迎える蛍。  二人の間の止まっていた関係が、ゆっくりと動き始めたという事だった。
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