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02. 私のために男の娘してるの?
本格的な授業は明日より開始予定のため、お昼を前に全校生徒は解散となった。
教室からわらわらと生徒が出ていく中、美貴が蛍に話しかける。
「どうしたの? 具合悪い?」
「え!?」
「自己紹介終わったあたりから全然喋らないから」
「あ、ごめんちょっと考え事を……」
美貴に心配かけてしまっていた事を詫びながら笑顔を見せる蛍の前に、玲がずいっと顔を出した。
「なになに?」
「ぎゃあ!」
思わず仰け反って驚く蛍に、美貴が玲の事を鬼の形相でギッ睨みつける。
蛍は男が苦手だと認識していたはずなのに、それをすっかり忘れていた玲は近距離に現れてしまい、慌てて謝罪した。
「わああごめん! そうだった! ほんとごめん!」
「……っ、いや、私こそ大袈裟すぎて、ごめん……」
本当は大袈裟にしたくてした訳なく、身構えていない状態で男子の接近を察知すると、玲でなくても今のような反応をしてしまう。
これが蛍の、無意識に出てきてしまう男嫌いの拒絶反応。
「蛍、それは彼氏できないでしょ……」
「はは……今のところそんな予定はないから……」
「え〜勿体無いなぁ蛍ちゃん可愛いのに」
「ちょっ、玲うるさい」
またしても美貴に睨まれたので、子犬のような瞳でシュンとする玲。
その時、静かにこちらに向かって歩いてくる、あの葵に気がついた。
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