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今度は驚かせないように細心の注意を払った玲が、その事を蛍にこそっと報告する。
「蛍ちゃん蛍ちゃん」
「っ!?」
「知り合い(?)がこっちくるよ?」
「え……」
顔を上げると、ごく自然な笑みを浮かべた葵が蛍目掛けてやってくる。
久々に会うはずの幼馴染なのに、何だか別人に感じて緊張が走る蛍。
すると突然、クラスメイトの男女数名が葵を取り囲んで立ち話を始めたのだ。
「俺も同じ志望だから仲良くしてね〜」
「その髪色良いね、どこの美容院?」
その可愛さで直ぐに注目の的となる葵だったが、多分クラスメイトの全員がまだ気づいていない。
佐倉葵という人物の性別が、男の子だという事を。
「……美貴、玲くん、私先帰るね」
「え……?」
「また明日〜!」
「うん、バイバイ……」
まるで葵から逃げるように教室を後にした蛍。
その後ろ姿を見送った美貴と玲は、顔を見合わせて首を傾げる。
そして、話しかけたかった蛍がそそくさと教室を出て行ってしまったのを確認した葵もまた、物言いたげな表情を浮かべながら、その場をやり過ごしていた。
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