02. 私のために男の娘してるの?

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「蛍のために、男の娘になったんだよ……!」 「………………ん?」  二人のいる空間だけ時間が止まり、やや冷たい春風がびゅっと通り過ぎていく。 「……私、のため?」 「うん」 「葵が、男の娘になったの?」 「うん」 「…………い、意味が、わからない……」  葵と向かい合っていた蛍が、額に手を当てながらふらりと踵を返すと、まるで雲の上を進むようにふわふわ歩き出した。  理解が追いつかなくて、一旦じっくり考えたかったが、それを葵は逃してはくれなくて。 ――ガシッ! 「!?」 「待って、最後まで話を聞いて!」 「っ……」  片腕を掴まれて、至近距離に葵の真剣な表情を感じた蛍の心臓が、大きく跳ね上がった。  腕から伝わる体温も握力も、もう昔の葵ではないけれど。  同じ行動を知らない男の子にされていたら絶対、反射的に振り払っていたこの腕が、現状のままでいられるのは。  見た目が女の子だからなのか。  それとも――。 「っ……!」  その時、蛍と葵の何とも言えない現場を通りかかったのは、二人よりも後に学校を出たはずの美貴と玲。 「あ〜あ、追いついちゃった……」 「やっぱ蛍ちゃんと葵ちゃんて知り合いだったんだな!」  何となく揉めているのを察して、申し訳ない表情をしている美貴とは反対に、何も感じていない玲が笑顔で駆け寄ってきたのだ。
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