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ついホッとした蛍のは反対に、二人きりで話をしたかった葵は複雑な心境を抱えながら、仕方なく美貴と玲を迎えるも。
隠せていない不満が顔から滲み出ているのを、美貴だけはわかっていた。
「葵ちゃん、玲でーす! よろしくね〜」
「清水美貴です、せっかく話していたところ邪魔してごめんね」
「……いや、大丈夫……」
人見知り、もしくは蛍以外に興味がない?
葵の素っ気ない態度と表情に、そんな事を考えた美貴は、明らかにお呼びでないところに来てしまったのだと玲の肩を軽く叩いた。
「二人の邪魔しちゃ悪いから、もう帰ろ」
「えーいいじゃんみんな仲良く、飯でも食いに行こうよ」
「あんた、空気読めない陽キャかよ」
玲に向かってめんどくさそうに突っ込んだ美貴だったが、効き目ゼロの玲は懲りずに葵へ声をかける。
「だって葵ちゃんとも話したいし、せっかくみんな同じクラス、いや同じ夢を追いかける仲間……!」
「っあのさぁ!」
玲の話の途中で声を上げたのは、蛍の腕を離しては不機嫌な顔を浮かべて腕を組んだ葵。
眉根を寄せ目を細めているので、ここにいる誰もが可愛い顔が台無しであると思っていたけど、本人はお構いなしの様子だった。
「その、ちゃん付けやめてくれない?」
「え? ダメダメ〜俺女の子はみんな、ちゃん付けて呼ぶ主義なんだ〜」
「だから、女の子じゃないから」
「あはは! またまた葵ちゃん面白い冗談〜…………へ?」
ヘラヘラとしていた玲の顔が、わかりやすく徐々に真顔になっていく中。
え、言っちゃうんだ?と思った蛍は、男である事を隠したい訳ではない葵が、男の娘になる理由がますますわからなかった。
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