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だったら、この生まれ持った中性的な顔立ちと名前を利用して、“男と認識されなければ良い”と思い付く。
それほどまでに葵は、もう一度蛍に近付きたかったし、幼い頃のように気兼ねなく触れ合いたかったのだ。
「ほら、こうやって座ってたら同性の友達感覚だろ?」
「な……た、楽しんでない!?」
「楽しいよ、蛍と普通に話せるし、他の人たち騙せてるし♪」
「はあ……あの臆病で可愛い葵は、一体どこへ……」
記憶に残っている葵が、数年疎遠になっていた間にこんなふうに変わってしまった事を嘆いた蛍。
しかし、その数年を感じさせないくらいに、普通に会話ができているのも事実で。
葵が男の娘になってくれた効果、かどうかはまだわからないが、今後の不安も完全には拭えずため息が漏れる。
すると、二人の会話を見守っていた美貴の、発言する隙がようやくできた。
「ねぇ蛍」
「ん?」
「葵くんの告白は、スルーなの?」
「え?」
キョトンとした顔を美貴に向けて首を傾げる蛍に、美貴も揃って首を傾げた。
「いやいや、え? 葵くん、蛍が大好きって……」
「ああ、それは子供の時からの口癖なの。何かとお互いに“大好き”って合言葉のように使ってたから」
「…………??」
何ともないように美貴に向かって微笑む蛍だったが、隣に座る葵の様子はそれとは真逆で。
可愛い顔が台無しになるくらいに、ものすごく混沌としたオーラと無気力な表情を浮かべていた。
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