1.絶体絶命の大ピンチ!?

1/2
前へ
/48ページ
次へ

1.絶体絶命の大ピンチ!?

 わたし花向(はなむけ)ひな()はいま、とってもとっても大変(たいへん)なことになっている。  ()っぱが()ざったやわらかい(つち)(しり)もちをついて、()(まえ)()ちはだかる女子(じょし)グループを見上(みあ)げる。  みくと花音(かのん)ちゃん、メイメイ、かまちゃん……。  みんな、5(ねん)2(くみ)のリーダーのような(おんな)()たちだ。  わたし? わたしはぜんぜんちがう。みくたちにはかなわない。  みくがひまわりなら、わたしは……歩道(ほどう)(よこ)()えている(くさ)みたいなかんじ。クラスにいても目立(めだ)たない。むしろ、無視(むし)されてるって()ったほうがいいかな? 「ねー、ひな()(はや)くしてよぉ」  花音(かのん)ちゃんがツインテールをゆらしながら、わたしの(かお)をのぞきこんでくる。  その()がぞっとするほど(つめ)たくて、わたしは(おも)わず()()してしまいそうになる。  だいじょうぶ、だいじょうぶ。  おまじないのようにそう(とな)えて、(ふく)(うえ)からおまもりをさわる。だいじょうぶ、ちゃんとここにある。 「ひな()がメイのあいさつ無視(むし)したから(わる)いんじゃん、わかってる?」  花音(かのん)ちゃんに(つづ)くように、みくも(わら)いながらわたしを()る。  わたしは二人(ふたり)から距離(きょり)をとるように、じりじりとお(しり)(うし)ろにずらした。  やわらかい湿(しめ)った(つち)のせいで、ズボンが(つめ)たくなる。  ()()そうとするわたしを()て、みくたちはおもしろそうに(わら)(ごえ)()げた。 「あー! ひな()こわいんでしょ?」  くすくすと、(ちい)さな(わら)(ごえ)がわたしを(つつ)む。  こんな場所(ばしょ)、すぐにでもはなれたい。  だって、ここは……。 「お、おばあちゃんが(はい)っちゃいけないって……!」 「なに? (こえ)(ちい)さくて()こえなーい」  わたしはひざの(うえ)で、()をぎゅっとにぎりしめた。  だれも(たす)けにきてくれない。自分(じぶん)でなんとかしなくちゃ。  (よこ)(ほう)()していたリュックをかかえて、ふるえる(あし)(ちから)()れて、()()がる。  わたしが()ってもみくの身長(しんちょう)にはとどかない。  (した)から見上(みあ)げるように、みくの(かお)()る。 「おばあちゃんが天狗(てんぐ)(もり)には(はい)っちゃいけないって()ってたの! (はい)ったら、天狗(てんぐ)にさらわれて、()べられちゃうんだって!」  今度(こんど)()こえないって()われないように、うんと(おお)きな(こえ)()った。  (わら)っていたみくたちが(すこ)しだけ、(しず)かになる。  でも、それはいっしゅんだった。すぐにゲラゲラとした(わら)(ごえ)が、だれもいない(もり)にひびく。 「ひな()ってホントお()さまね!」 「で、でも、おばあちゃんは本当(ほんとう)天狗(てんぐ)がいるって……」  みくはわたしの言葉(ことば)をふんっと(はな)(わら)った。 「そんな都市伝説(としでんせつ)みたいなものを(しん)じるところが()どもだって()ってるのよ!」  みくの言葉(ことば)合図(あいず)にしたように、女子(じょし)たちがわたしの(うし)ろに(まわ)って、ぐいぐいと背中(せなか)()しはじめた。 「ほら、(はや)(はい)っちゃえー!」 「や、やめて……!」  わたしの悲鳴(ひめい)無視(むし)して、ぐいぐい背中(せなか)()される。  天狗(てんぐ)(もり)入口(いりぐち)には、(おお)きな(あか)鳥居(とりい)がある。  その鳥居(とりい)が、わたしにおいでと()うように(おお)きな入口(いりぐち)()けて()っている。  ――天狗(てんぐ)(もり)には(けっ)して(はい)ってはいけないよ。  おばあちゃんの(こえ)(あたま)(なか)にひびいて、わたしはぐぐっと(あし)をつっぱった。  ぜったいに(はい)っちゃいけない。  おばあちゃんとの約束(やくそく)(やぶ)っちゃいけない。 「そんなことしてもムダだよ!」  花音(かのん)ちゃんの(あか)るい(こえ)がひびく。  こういうの、なんて()うんだっけ?  ――ひな()、あんた学校(がっこう)でいじめられているんじゃ……。  ああ、そうだ。  わたし、花向(はなむけ)ひな()学校(がっこう)でいじめられている。  杜ノ町小学校(もりのまちしょうがっこう)5(ねん)2(くみ)に、わたしの居場所(いばしょ)はない。  いまも(ばつ)ゲームだっていって、(はい)っちゃいけない天狗(てんぐ)(もり)(はい)れって()われてる。 「ほらほら、もうちょっとだよー!」  鳥居(とりい)はすぐ()(まえ)までせまっている。  (おんな)()四人(よにん)(ちから)いっぱい()される。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加