第4話

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第4話

 俺のまわりにいるだけで、人が死んでいく・・・。  俺のいる場所には、必ずと言っていいほど、殺人事件、自殺、事故死など、死に関わる事件が起こる。  それが、死に寄せ。  研究所にいた頃も、研究員が何人か死んでいったと、スクイアットロから聞かされた。  今日は、俺の両親が事故により、亡くなった。  それで、俺は児童養護施設に入所することになったのだけど、そこでも誰かしろが死んでいくんだな、と想像ができる。  この、死に寄せの魔力が消えない限りは・・・。  俺の死に寄せは、日に日に強くなっていくのは、二日に一回のペースで、誰かが死んでいった。  大きな児童養護施設だったけれど、職員や、子供たちが次々と亡くなっていった。  児童養護施設にいる人たちが生きている日もあるけれど、その時は大体、学校の先生や生徒が死んで言ったりした。  ここで、スクイアットロが俺の前に現れた。 「やあ」 「のんきだな」  俺は、怒る気にもなれなかった。 「どうだい? この、死に寄せと呼ばれる力は?」 「最低でも、二日に一人は、死んでいく。 俺のせいだって、自分を責めたくなるけど、自分ではどうしようもできない。 今すぐ、どこかに消えてしまいたいんだ」 「消えるって、どんなふうに? 残念ながら、お主が死ぬっていう選択肢はないぞ。 なぜなら、お主はパラレルワールドへ転生して、また同じことを繰り返すだけだからな」 「自身が死ぬことが許されないなら、俺は無関係な人を巻き込みたくない。 だから、犯罪者のところに向かわしてくれないか?」 「犯罪者のところに、向かってどうするつもりだい? 根本的な解決にはならないはずだけど」 「俺の死に寄せがあれば、犯罪者も何かしろによって、死んでいくと思うから、どうせ生きていけないっていうなら、そいつらが巻き込まれた方がいい」 「学校はどうするんだい?」 「行かない。 行けないって、言う方が正しいかもしれない。 児童養護施設の誰かが生きている時は、大体は、学校の誰かが死んでいる。 なら、俺はそんなところは行くべきじゃないかもしれない。 そして、俺はひとつだけ疑問を抱えていることがある」 「疑問とは?」 「スクイアットロは、俺といて大丈夫なのか?」 「いい質問だな。 死に寄せは、人間には間違いなく、適用される。 だけど、魔女と同じ能力を持つ者が一緒にいれば、呪いと同化するだけなのさ」 「よくわからないけど、スクイアットロは大丈夫ということでいいのかな?」 「そういうこと。 さ、お主は使命を果たす時が来たんだ。 ライハイツを救うという」 「ライハイツ君は死んだのに?」 「ここは、落ち着いて最後まで聞いてほしいな」  スクイアットロは、静かにゆっくりと俺に問いかけた。 「お主は、ライハイツ君をどんな方法で、助けたいかい? もう一回死んで、平行世界へ向かい、全く別人であるライハイツ君に会いに行くか、 それでも、お主の死に寄せの能力で死んでいくがな。 息子を授かり、自身の子に同じ名前をつけさせるか。 転生したライハイツ君を捜して、生まれ変わりを愛するか。 おいらのような種族のペットを飼い、動物に同じ名前をつけるか。 まだ氷の美少女と、岩の美少女が封印をされているから、一人だけを助けて、性別は違うけれど、ライハイツという名前にするか。 もちろん、戦闘美少女の間に息子を授かるという選択肢もあるぞ。 ここの選択肢で、お主が今も求めているライハイツ君とやらの運命が大きく左右されるのだぞ。 さあ、どうする? どうしたい?」 「ライハイツ君を生き返らせるという選択肢はないのか?」 「それは、ありえないね。 その選択肢をお主が選んだとしても、一度死んだ生物が生き返ることなんてない。 それができる世の中だったら、どんな極悪犯も生きられるっていうことになるから、死刑も存在意義がなくなるし、戦闘美少女がやってきた功績もすべて無駄になる。 これは、変えようがない事実だ。 一度、死んだ生物は例外はない。 このまま、天に召されるか、地の果てまで落ちていくか、このまま現世で幽霊と呼ばれて時を過ごすか、この三択しかない。 生き返らせる選択肢を探すやつは、どんな手段であっても、理由が論理的でも、必ず失敗で終わる。 あとは、人間の誰もが一度は憧れる不老不死という目標も無駄な行為でしかないさ。 不老不死になれた者は、一度もない。 例外があるとしたら、意識がない状態で封印されることだけど、これは幸せと呼べるかい? だから、おいらの選択肢以外を探そうとするんじゃなくて、おいらの提案した中から選んだ方が適切だと思うのは、おいらだけかい?」 「それは・・・・。 他にも可能性があるかもって探したかったから。 パラレルループとかじゃなくて、ただの時間を巻き戻す能力だったらよかったなって思っているから」 「時間を巻き戻す能力かあ。 すごーくいいね。 だけど、この能力をおいらはおすすめはできない。 なぜなら、これは何回でも使おうって思えてしまうからさ」 「何の根拠があるのさ?」 「根拠も、証拠も出るわ、出るわの状態だ。 時を巻き戻す能力を持てば、誰でも都合の悪い時にループする。 よく、ループ物の作品とかは、主人公が何回もループしていたりしないかい?」  スクイアットロの言うことは、何も間違っていない。  だけど、おいらは何か騙されている気がするんだ。  何なのかわからないけど、大事なことを見逃している気がしてならない。 「時間をループする能力がもし、俺にあったら、間違いなく、ライハイツ君を救うためだけに使っていたかもしれない。 過去に戻れば、あいつが戻ってくるって、未来に進めなくなっていたような気がしてきた。 スクイアットロ、君は正論ばかり言う」 「よろしい。 お主は、正しい判断へ自身を導けるようになってきている。 だが、もう少しだ。 この死に寄せの魔力がある限り、どんなに過去に戻ったとしても、ライハイツ君は必ず、事件に巻き込まれて死ぬ。 それは、殺人事件かもしれないし、自殺を選ぶかもしれないし、事故に巻き込まれるかもしれない。 ただ、確実なのは、何かしろの方法で生きることが終わってしまうということだ」 「そんなにはっきり言わなくても・・・・。 病死とかはない?」 「死に寄せは、死を呼び寄せる魔力であって、病気は発症させないからね。 ここは、実はおいらも気になっていたところなんだ。 事故死、殺人、自殺、死に寄せの魔力を持つ者の悲劇は嫌というほど、おいらが恐怖がわからなくなるくらいは見てきたけれど、なぜかいつも病死というものがない。 ここが不思議なところなのだ。 それだけ、多くの謎が残されているってこと」 「俺、ライハイツ君を救うことが正しい選択じゃない気がしてきたんだ」  俺は、ライハイツ君を救うことばかりが頭にあった。  だけど、冷静に考えれば、それがライハイツ君のためになるのか? 「俺は、ライハイツ君のことを好きになっていたのかもしれない。 盲目的になりすぎて、まわりも、自分のことも、これからのことも見えていなかった。 だから、俺は相手が望んだことと違うことはするべきじゃない。 救わなきゃいけないのは、ライハイツ君個人じゃない。 この世界だ」 「世界を? この広大で、人口があふれているような世界を、どうやって救うんだい?」 「いじめ殺しは、こうしている間にも、次々と人の命を奪っていく。 それって、見過ごせることではないはずなんだ。 だから、俺は・・・・、いじめ殺しの首謀者を見つけたい」 「首謀者? おいらが見つけられなかった首謀者を? いじめ殺しを作っている会社の社長かもって疑って、裏で操られていたとわかっても、首謀者を見つけらなかったんだぞ。 簡単にできないことを、やりきるかのように言っていいのかい?」 「首謀者がいる限り、この惨劇は終わらない。 何度でも、パラレルループをする。 だから、この根幹を切る。 これが、俺のやり方だ」 「これは、夢物語としか言いようがない。 まあ、いいだろう。 それがお主が望むことなら」 「俺は思うよ。 あの緑髪の女の子の封印を解かなくてよかったと」 「ライハイトが気に入らなかったのかい?」 「正直、それもある。 だけど、どんな戦闘美少女にも相性がある。 二人のうちのどちらにするかは、今の俺には決められない。 だけど、いつか決めようと思う。 今の俺が決断しないだけなんだ。 最初は、三人を救うことを選んだけれど、俺は気づいたんだ。 全員は救えないって。 死に寄せの魔力は、俺に悲しい出来事ばかり起こしたけれど、そればかりじゃない。 俺に気づかせてくれたんだ。 あれがなかったら、俺はいつまでたっても、実現不可能なことも頑張ればなんとかなるって思いこんだままだったかもしれない」 「ポジティブすぎる。 この魔力のせいで、心を痛めたり、病んだりしないのかい?」 「痛んだり、病んだりもした。 だけど、どんなにあがいても、この俺で生まれた以上は、どう生きていくかで進むしかない。 だから、俺はいつか、誰かを救ってみせるよ。 後悔しない選択を見つけてみせる。 それまでに、待っててほしいんだ。 スクイアットロには、俺が答えを出せるまで、何秒でも、何分でも、何時間でも、何日でも、何週間でも、何か月でも、何年でも、何十年でもいい。 待っててほしいんだよ。 俺は、すぐに答えが出せないから」 「はあ、おいらは、今までに出会ったことのないパートナーを持ってしまったぞ。 だが、いいだろう。 それも含めて、責任持っての相棒だ。 最後まで付き合ってもらうぞ。 三人のうち、一人は救えたのだから、残りの二人を助けられれば任務は完了だからな。 短い間かもしれないけど、よろしくな」  俺は、自分のことを嫌いになったりしない。  このままの俺で、今日と明日も生きていくんだ。  俺は、スクイアットロと一緒に中国に向かった、  治安は悪いけど、世界一人口が多い国。  そこに行けば、何か変わるわけではないけど、俺はここで自分の人生を歩むことにした。  もちろん、俺の近くにいる人は事件に巻き込まれて、中国の人口はどんどん減っていく。  気が付けば、人口が1億以下にもなっていた。  俺の死に寄せの能力は最強で、近くにいるだけで、その場所にいるだけで、死に関わる何かしらの事件は起こる。  ここで、中国では「歩く死神が通ると、事件が起こり、次々と亡くなっていく」という噂が広まり、中国は「死の王国」とか「死神の国」とも呼ばれるようになった。
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