1人が本棚に入れています
本棚に追加
番外編~スクイアットロの過去~
おいらは、スクイアットロ。
最初の紫髪のパートナーからは「リスナー」という異名呼ばれ、第二の青髪のパートナーからは「リスニー」という別名で呼ばれたリスの姿をした異世界出身の精霊。
本名は、この通りにスクイアットロ。
氷漬けにされたのは、第一のパートナー。
岩に封印されたのは、第二のパートナー。
おいらは、大好きな彼女たちを守り切れないでいた。
こうすることでしか守れなかった。
おいらは、雷と樹木を操れる、ライハイトに出会った。
出会ったきっかは、ほんの些細なもので、緑髪のライハイツとライハイトの母親とやらと、交流があったから。
この時のライハイツは、雷はいと君と本名で呼ばれていた。
「はいと君は、あたしが守るのですよ」
「うん」
短い緑の髪を持つはいと君は、従姉のライハイトの後ろをいつもついていく形だった。
「今日も、忙しいやつだな」
「仕方ないのですよ。
はいと君はまだ小さいのですから」
「おいらには、ただの天然バカとしか思えないがな」
「はいと君は、まだ3歳なのです。
だから、いろいろと不器用で、あたしが守ってやらないとなのですよ」
「ふうん、よくわからんがな」
ライハイトのわからない習慣といれば、家でよく緑の色の髪を黒く染めていたということだった。
「おい、なぜ毎回そんなに染めておる?
髪が痛むではないか」
「染めていないと、友達に言われるのです。
実際、幼稚園でもバカにされるのですよ」
「人間は、それは個性ととれないのか」
おいらは、このライハイトという人間のことも、はいと君のことも理解できなかった。
あの二人は天然と表現することが正しいのかどうかはわからないけど、変わっているかんじがしたから。
理解できない行動といえば、他にもあったぞ。
ある時は、はいと君と、ライハイトはよく二人でおつかいに行くわりには、迷子になることが多く、家に帰れない。
それなら、最初からおつかいに行かなきゃいいと思うものの、なぜか二人は買い物に行く。
「どうしよう、ライハイト?
僕たち、迷子になったよ」
「あたしも、わからないのですよ。
どうしよう。
家に帰れないのです」
二人で、わんわん泣き始めた。
その場にいたおいらは、腹がたってしょうがなかった。
近くにいる人たちはだれもいないので、声をかける人も振り返る人もいないけど、子供の泣き声はすごく響く。
「おいらが、帰り路教えたげるから、泣くでない!」
俺は、思わず大きな声がでた。
「リスさん、こわい・・・・」
「僕もこわいよ・・・」
こうして、二人はまた泣き続ける。
めんどくさい子供には、帰り道を教えることにした。
でないと、誰か助けが来る前に、おいらの耳の鼓膜の方が先に破けそうだったから。
「おいらが、帰り道を教えてやるから、その間に泣き止まんか」
「ほんとう?」
はいと君が、目を輝かしていた。
「このリスは、言い方きついけど親切なのですね」
「一言余計だ。
それに、おいらはリスという名前ではない。
おいらは、スクイアットロだ。
覚えておくんだな」
「スクイアットロ?
名前、長くないのですか?」
「ライハイトに言われたくないわい。
とにかく、これからはリスではない。
二度言うぞ。
スクイアットロだ」
「ふうん、興味ないのですよ」
「最近の子供は、こーんなに生意気なのか。
全く嫌気がさすし、お別れできる日が待ち遠しいわ。
あとは、事件とかにまきこまれてくれないか?」
おいらは、腹が立っていき、この子供二人に毒を吐いた。
ここまで言えば、いくら幼いといえ、反省するだろう。
おいらが気が立っていることを気づいてくれるかもしれない。
だけど、そんなことはなかった・・・。
「僕、トイレ行きたい。
漏れそう」
「この空気を読めない小僧め。
トイレなんて、スーパーの店内か、公園の公衆トイレとか設置されている場所じゃない限りないだろう。
人間世界出身なら、そのくらいわかれいっ!」
おいらも、おいらで、なぜ子供相手にこんなムキになっているんだろうか?
「スクイアットロは、3歳に優しくするのですよ。
トイレに行きたいって言っているんだから、行かせてあげるのです」
「話を聞いてなかったのかい?
トイレはないぞ」
「そんなことないもん!
トイレは、おうちにあるってお母さんが言ってたよ!」
「じゃあ、おうちに帰るぞ!」
おいらは、二人をト家まで案内した。
子供を相手にすることは、すごく疲れてくる。
おいらは身体能力が高いけれど、こんなに精神的に追い詰められる仕事は初めてだ。
「お母さんは?」
「お主のお母さんは、任務決行中だ。
今更、聞くんじゃない。
ライハイツの息子だけあって、相当な天然バカだな」
「ひどいよ・・・・。
そこまで言わなくてもいいじゃん。
僕、トイレのやり方わかんなくて困っていたの。
スクイアットロ、助けて」
おいらは、堪忍袋の緒が切れそうだったけれど、ここは黙ってはいと君のトイレについていくことにした。
「はー、すっきりした。
ありがとうね、スクイアットロ」
おいらは、怒る気力も失せていた。
「トイレもできないとか、どれだけ母親という存在に依存しているのか・・・・」
3歳の子供って、こうゆうものだろうか?
おいらには、やっぱり理解できないことがそこにあった。
「全く、子供の世話をどこまでしなくてはならんのだ?」
おいらは、ライハイトの幼稚園の制服を着させていた。
今時の幼稚園児は、自分で着替えもできないのか?と不満ばかりが募った。
「明日からは自分のことは、自分でできるようになれい」
「そんなの無理なのですよ。
あたしは、まだ子供なのです」
「この前は、立派なお姉さんとか言わなかったか?」
「人の言うことにいちいちこだわりすぎなのですよ。
幼稚園児の言うことを、真剣に聞かないでくさいなのです」
「この前は、子供の話も真剣に聞き入れるなんてこと、言っていなかったか?」
「適材適所という言葉を知らないのですか?
状況で、今、何をするべきなのかいい大人がわからないのですか?」
「お主に言われたくないわい!
ああ言えばこう言うとか、かなり生意気じゃないか。
精神年齢は2歳以下と評価しておこう」
一発ライハイトに魔法でも飛ばしてやろうかと思ったけれど、いくら選ばれし者でも、どんなに生意気であっても、相手は子供だし、あのお母さんがそんなことは許さないだろう。
「覚えておれ。
いつか、千万倍にして、この怒り晴らしてやるからな」
「ご自由にどうぞなのです。
リスごときのたわごとに、こっちも付き合ってられないのですよ」
「この言葉、どこで覚えてきた?
子供のくせに生意気なあ」
こうして、ライハイトの幼稚園時代は、このおいらと喧嘩することが多かった。
ライハイトが精神的に落ち着き始めたのは、小学校に入ってからだった。
「スクイアットロ様、魔法を教えてほしいのです」
小学校に入学してから、呼び捨てから様付けに変わったけれど、おいらは数年前の恨みを忘れていなかった。
「ほう、その前に謝るべきことがあるんじゃなかろうか?」
「謝るべきことなのですか?」
「数年前に、おいらにさんざんなことをかましてこなかっただろうか?」
「何のことなのですか?」
「とぼけるでない。
おいらと喧嘩したことは、母上様も存じておる。
素知らぬふりとか、許されることなのか?」
「ごめんなのです。
おぼえていないかもなのです」
「あれだけのことを言っておいて、憶えていないとか都合のよい脳みそが出来上がったな」
「あたし、スクイアットロ様と喧嘩したことは、お母さんから聞いたのです。
ですが、あたしはどうして喧嘩したのか、どんな内容でとかは憶えていないのですよ。
ですから、あたしは精一杯スクイアットロ様のためにできること、全部尽くしますのです。
だから、お許しただけませんなのですか?」
「本当だろうか?
信じていいのだろうか?
お主の話」
「信じるかどうかなんて、最初からわからないのですよ。
なら、信じることから始めようなのです。
あたしは、スクイアットロ様のパートナーになってみせるのです。
最高で、今までにないくらいに、あたしのことを大切な存在として認めてほしいのですよ」
どうせ、子供の言うことだ。
後で、きっと意見を変える。
いうもみたく、皮肉な発言をしていたら、話がややこしくなりそうだ。
ここは、ひとまず、見守ることにしよう。
「この根拠、あるなら証明してみるのだ。
思いつきの言動や行動に、おいらは寛容できないのだぞ。
子供だから、なんでも許されると思うでない。
パートナーになるということは、これから乗り越えられないんじゃないかって思うくらいの辛い出来事も待っておる。
いつ、どこで命を落とすとかはわからないのだぞ?」
「あたしの使命は、命かけで世界を守ることなのです。
生半可な気持ちで、挑みませんなのです。
これから、共に戦わないのですか?」
「いいだろう。
これから向かうぞ」
「はいなのです」
こうして、おいらとライハイトは相棒と関係になったけれど、おいらの中では昔やられたことを許せていなかった。
いじめ殺しとの数々の戦いを数年も続けた。
「はいと君、9歳の誕生日おめでとう」
「おめでとうなのです」
おいら、ライハイト、ライハイトの母、はいとの母で、はいと君の誕生日を祝った。
これは、小学校の夏休みの出来事だった。
「ありがとう」
おいらは、数年の時をえて、ライハイトを少しずつ信用するようになっていた。
ここで、暴食のいじめ殺しが近いうちに、現れるとか誰も予想ができなかった。
ライハイトと、おいらがいつも通りにいじめ殺しの退治に挑んでいると、一人の人間がいた。
「お腹すいた・・・・。
お腹すいた・・・・」
こうして、目の前で怪物も人間も食べていた。
「いじめ殺しって、食べられるのですか?」
「そんなはずはない。
あれは、暴食のいじめ殺しだ。
ライハイト、気をつけるんだぞ」
「はいなのです!」
ライハイトは、暴食のいじめ殺しに雷を飛ばした。
「おいしい・・・・。
この雷、すごくおいしい・・・。
もっと、もっと、ちょうだい・・・・」
「これ、どういうことなのですか?」
「暴食のいじめ殺しは、能力も魔法も食べてしまうんだ。
満足するまで与え続けるか、物理攻撃のどちらかで勝つしかないということになるぞ」
ライハイトはこうして、何度も雷や樹木を飛ばしてみても、暴食のいじめ殺しは「おいしい・・・」と全部、吸収していくだけだった。
「一体、どうすればいいと言うのですか?
あたしには、残る手段もありませんなのですよ」
「諦めるしかないな」
「諦めるなんて・・・・」
「こんな危機的状況は、立ち向かっても無駄なのだ。
今は、自身の身を守ることだけに専念するしかないだろう」
「待ってなのです。
人々のことはどうするのですか?」
「どうしようもできないと言うところが結論だ」
「そんな・・・・!
何か方法とかないのですか?」
「おいらが戦闘に赴くという手段もあるかもしれないが、そんなことしたら、暴食のいじめ殺しに目の敵にされるだけだ。
おいらは、ただのリスではないからな。
暴食のいじめ殺しは、おいらの正体を知っている」
「正体ってなんの話なのですか?
それに、スクイアットロは話すこともできますし、本当にただのリスではないみたいなのですが」
「今のお主に、おいらのことを語るほど強くないだろう?
なら、危機的状況を突破することだけに前進するのだ」
「諦めなくないのです・・・・」
「ライハイト?」
「あたしは、そんな簡単に諦められませんのです。
あたしは、何度でも、自身の身が尽きるまで戦い続けますのですよ」
「ライハイト?
勝ち目がないとわかっているのにか?」
「ここで逃げたら、次は誰が犠牲者になるのか、わからないのです。
だから、あたしは戦い続けますのです。
あたしの目的は、世界を守ることなのですよ。
だから、諦めませんのです」
「ライハイトがそこまで言うなら、いいだろう。
おいらも、最後まで付き合おう。
パートナーの言うことは、従うことになっているからな。
仕方なくだ」
おいらは、ライハイトの意志を認めた。
だけど、これはどんなに頑張っても勝てない相手なので、やっぱり、ライハイトはおいらから見たら、無謀そのものかもしれない。
「暴食のいじめ殺し、覚悟するのです。
君の狼藉は今日までといたしますのですよ」
「おいしいもの、くれるの?
おいしいもの、もっと食べたい・・・・。
今のじゃ、まだたりない・・・・」
ライハイトがかまえたところに、ライハイトの母と、はいとの母であるライハイツが現れた。
「一人で、勝てると思っているのかしら?
こんな相手」
「お母さま」
「ここは、お母さまと妹に任せて?」
こうして、ライハイトの母と、ライハイツが立ち向かったものの、暴食のいじめ殺しに「いただきまーす」と二人とも食べられてしまった。
「あ・・・・あ・・・・」
ライハイトは、目の前で自分の母と叔母が食べられるところを見て、立ちすくんでいた。
そう、二人とも暴食のいじめ殺しに殺されてしまったのだ。
「この二人が、英雄がやられたら、後のことはどうしようもできない・・・・」
「何をのんきなことを言っているのですか?」
「ライハイト?」
「この二人の仇を今、うつのです」
「考えが古いぞ!
憎しみから生まれるのは、憎しみだけだ!」
「あたしは、そう決めたのですよ・・・・。
滅べ、滅べなのです」
こうして、ライハイトは次々と樹木と雷を発動させ、暴食のいじめ殺しに技を食らわせるだけだけど、その度に「おいしい・・・」とどんどん吸収していくだけだった。
「滅べ、滅べ・・・・。
滅んじまえ・・・・・」
「ライハイト!
ライハイト!」
おいらは何度も、ライハイトに呼びかけていたけれど、ライハイトは聞こえていなかった。
おいらは、ライハイトの足が樹木化していることに気づき、左肩に乗っていたけれど、すぐに浮いた。
「滅んじまえ・・・・・。
滅べ、滅べ。
消えろ、消えろ。
消えちまえ・・・・」
暴食のいじめ殺しに能力で攻撃していくけれど、その姿は無謀そのもので、本来のライハイトからは見られない人間性を失った復讐だけを誓ったような殺人鬼みたいな感じだった。
「ライハイト!
もういい!
ここまでにするんだ!」
だけど、ライハイトにその声は聞こえていないみたいで、何度も樹木や雷を飛ばす。
「お前なんて、お前なんか・・・・・。
この世界から、消えればいいんだ!」
ライハイトは普段は「なのです」口調だけど、それすらもなくなっていて、彼女じゃない別人のようだった。
「ライハイト!
このままだと、ライハイトが・・・・」
ライハイトの樹木化は、下半身まで進んでいた。
だけど、ライハイトは気にする様子もなかった。
暴食のいじめ殺しは最初は「おいしい・・・」と言っていたものの「もう、食べきれない・・・」に変わった。
「お腹いっぱい・・・・・。
苦しい・・・・・。
さっきの二人も、食べたからかもしれない・・・・。
これ以上、いらない・・・・・」
「消えちゃえ!」
この一言で、暴食のいじめ殺しは木になってから、雷で撃たれ、粉々になった。
暴食のいじめ殺しを倒すことに成功したものの、ライハイトは木になってしまった。
おいらは、うまく避けていたから大丈夫だったけれど、このことは上司に報告しなくてはならないな。
「ライハイトよ。
お主は、よーく頑張った。
だけど、すごく無謀な戦い方をした。
これからは、誰かが封印を解いてくれるまで、眠るがよい。
その代わり、上司の方針により、お主は記憶を失うことになるかもしれないがな。
おいらは、また新しいパートナーを探すことになるだろう」
おいらは上司に報告をした後に、樹木化したライハイトを異空間に移動した。
異空間には氷漬けになった美少女、岩に封印されて美少女、最後に樹木化した美少女のライハイトが置かれることになった。
最初のコメントを投稿しよう!