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出会い
「ライラス・アリシトロシュです。」そう言って彼は頬を赤らめた
彼の名はライラス・アリストロスだ。きっと噛んでしまって恥ずかしいのだろう。ここは気づかないふりをしてあげなくては、と思った
なにせ、彼は弟と同い年。
「初めまして、エルティア・フォーマンです。これからよろしくお願いします」と先生に習ったばかりのカーテーシーを披露する。
「は、はい……」
こうして、私とライラスの婚約は決まった。
貴族社会で妻が三つ離れているとあまり良い顔がされない。けど、侯爵はあまり気にしないようで、なぜか私を婚約者へと選んだ
それから彼とは、お互いの家でお茶会をしたり、本を読んだりピクニックなどして過ごした
けど、弟と同い年であり親友でもあるライラスは弟以上に見れなかった
「ティア!」
「ティアっ」
「ティア…」
ライラスの瞳は変わっていった。
最初はお姉ちゃんの慕う弟のようだったのに、だんだんと愛おしい人を見つめるような目になっていった
「ねぇティア、絶対俺と結婚しよーね」と手を繋がれる
「いいわよ。」
(どうせ一時の感情だもの。こんな可愛いライラスを私に縛り付けるのは可哀想だわ)
「やったぁ!」
「……」
喜ぶライラスに罪悪感を感じた。
それから数年後ーー
私は誘拐された。相手は身代金目的のようで手荒な真似はしないというけど信用はできない
(あぁ、こういうときに魔法が使えないのは不便ね…)
魔力はあるが、魔法を行使することはできないのだ。
魔術はかろうじて使えるが、魔術は呪文を唱えなくてはいけない。口を塞がれてしまったため唱える事ができない。
(はぁ……これからどうすればいいのかしら…)
不思議と恐怖の気持ちはない。ただ、これからの未来が心配なだけ。
誘拐された令嬢と知られれば、傷物と扱われる。何もなかったと言っても信じられないだろう。
(婚約破棄されちゃうわね。)そう思うと胸がズキリと痛んだが、弟離れするからだ。と自分に言い聞かせた
とはいえ、密かに祈っていた婚約破棄。私からライラスを解放する事ができる
(願ってもみないことよね)
足や手を拘束され動きづらいが、ゆっくりと壁へ近寄り、寄りかかる
ボッーとしていると、突然轟音がし、家が揺れた
閉じ込められているところは長年誰も住んでいなかったような空き家。
建てられてからすでに40年は経っているだろう。
何が起きたのかはわからないが、家が揺れるほどのことが起きた今、どうなるかはわからない
(流石にこんなところで死ぬのは嫌よ…)
誘拐されたとはいえ、こんなところで死んでしまうのは嫌だ。
目をギュッと瞑りただまるくなることしかできなかった
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