海の日

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 くっついた所からじんわりと広がる体温に、脳が沸騰しそうだ。 …いや、もうしているのかもしれない。 だって、こんなの…頭がおかしくなってしまったとしか思えない。 俺の上に跨るサイカワ ジュンヤは、上半身ごと倒れ込み、心地よさそうに目を細めていた。 暑さに溶けた氷のように、伸びきった彼の手足は、少し汗ばんでいた。 「……重いし、あつい…んだけど…」  相変わらず掠れた声は治らない。  潰れたカエルのごとく…俺の腹で優雅に寝そべるのは、正真正銘、サイカワ ジュンヤだ。   …俺は、夢を見ているのか? じゃあ、この、確かに感じる重みと体温はなんだ。 何一つ理解出来てない俺の脳はただひたすらに状況を整理しようと奮闘している。  起きたら知らない部屋にいて、気づいたらなぜかサイカワ ジュンヤが迎えにきて、その彼は別人のように元気で、笑っていて? 俺のことをーーーーそこでようやく、処理不可能な言葉だけが、脳に滞った。    「……さっき……なんて言った?」  俺の上で横たわるサイカワ ジュンヤは、力のないふにゃふにゃの腕で、絶対に起き上がるまい、とささやかな抵抗をする。  こっちは気が動転している真っ只中だというのにも関わらず、自由奔放な彼に少しだけ腹が立った。 顔を背けたまま、くすくすと笑う彼に、わざと脇の下に手を入れて見れば、弱点なのか声を上げてすぐさま自立した。 …本当に、子供みたいだ。 起き上がらせた彼を膝から降りるよう目線だけで訴えると、つまらなそうに口を尖せた。 しぶしぶ降りた彼がそのまま踵を返すと、振り返りざまに言葉を紡ぐ。  「なんでもいいけどさ、早く着替えてきてね」  「あ。ちょっ、待っ…」 白い手のひらがドアノブにかかる。  まだ聞きたいことを聞けていない。 伸ばした俺の手をすり抜けるように身をひるがえした彼は、悪戯っぽく笑った。 「下で待ってるから。早くしないと暑さで……俺、ドロドロになっちゃうかも」  意味深なセリフを吐き捨て、ウインクと共にドアが閉まる。 突然の静寂に、未だ脳みそはERRORを叩き出していた。
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