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…俺はいつ元の姿に戻るのだろうか?
クラスメイトの死…、ヒビヤ ナツメの死を迎えた時か?
それは即ち今の俺の死を意味するのではないか。
…それとも、今日寝て目覚めたら、明日はなんでもないヨコタニ リツとしての8月26日が始まるのだろうか…?
「あの…さ…」
「ん?」
微笑んだ彼が俺を優しく見つめていた。
瞳に差した眩い光に俺の…ヒビヤ ナツメの顔が反射して映る。
心臓がうるさいほど全身を震わせる。
言うなら……今しかないと思った。
俺にとってはつい昨日の出来事である、サイカワ ジュンヤの顔が、目の前の彼に重なってブレる。
骨格、髪形、見た目は全然変わらないのに、俺に向けられているこの感情は、まったくの別物で…。
「ヨコ、タニ…」
自分の声ではない誰かが、俺の名を呼んでる不思議な感覚に浸りながら、言葉をつづけた。
「ヨコタニ…リツって……知ってる?」
急な質問に数回瞬きを繰り返した彼が首を傾げる。
「…急になに?どうしたの?」
繋いだ手に無意識に力がこもるのがわかる。
この事実を告げてしまったら、どうなるのだろう。
この一言で、夢が一気に覚めて、なんでもない日常に戻るのだろうか。
俺にとってなんでもない…たった一人のクラスメイトが死んだ、あの日に。
そしたら目の前の彼は、また抜け出せない闇の中へ…落ちていくのか。
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