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お昼休み。
徐々にいつもの雰囲気を取り戻しつつあった教室は、もちろんヒビヤ ナツメの話題で持ちきりだった。
どうやら、死因は自殺らしい、とクラスメイトが口々に噂していた。
親との関係があまり良くなかったらしい、虐待を受けていたそうだ、なんて嘘か本当かも分からない話が教室を飛び交う。
実際、自殺かどうかなんて誰にも分からないが…おそらく皆、この漠然とした不安を誰かと共有したいんだと思う。
「あいつ…大丈夫かね」
「ん?」
友人のミタが弁当をかき込みながら、心配そうに言葉を紡ぐ。
反応した俺の手が、玉子焼きを掴み損ね、そのまま机に転がった。
箸で突き刺して口へと運ぶと、甘じょっぱい我が家の味が広がって、不思議と不安も少し安らいだ気がした。
ミタは俺の様子に小さく笑ったあと、顎だけ動かして右斜め後方の席を示す。
「ほら、あいつ。ナツメと仲良かったろ」
振り返ると、本と向き合う1人の男子生徒がいた。
サイカワ ジュンヤ。
その視線は手元の本から逸らされることなく、上下左右に一定の動きを続けている。
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