その日

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はいごめんなさい。人様に結婚式のスピーチという負担重めな役をやらせておいて上から目線ですわね。一応謝ります。でもね、そのウン万倍も、私は紗香から上から目線のマウントを喰らってきたんですわ。今日ぐらいいいじゃない。 紗香のスピーチは小学生から現在に至るまでの私を賞賛する内容だった。私と紗香との「一緒に〇〇したとき△△でした」的な内容は一切無し。 そうだろうな。私は紗香と共に苦楽を乗り越えた覚えは一切無い。紗香の傍若無人さに振り回されて、それでも現在に至るまで一緒に乗り切った舞と杏果ならそれに該当するんだけど。でもこの大人数の前で、そんなエピソードを披露する役目を舞や杏果にさせるわけにはいかなかった。 スピーチを終えた紗香に女神レベルの微笑みを贈る。自分で女神って言うなって?今日ぐらい、いいでしょ? 一色家側の招待席の前方を見る。かすみんをはじめ、会社の人たちが座っている席だ。かすみんは霧島課長と平和に談笑している。霧島課長は厳し目だけど、明るくてフォロー上手美人だ。お子さんは今年8歳と5歳のやんちゃ兄弟だと聞いた。 霧島課長の有無を言わせぬ微笑みに何度背筋が凍ったことか……。霧島課長の指示にはで応えるのがこの課で上手にやっていく処世術だ。それでも、霧島課長から間違ったことを指示されたことは一度も無い。尊敬できる姉御様だ。
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