【第三章:繋がるこころ】

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    ◇  ◇  ◇  家に帰ったなら、まず指輪を握ってみたい。  新幹線の座席に沈み、俊也は無意識に胸に手を当てていた。  ──そうだ、久しぶりに指に嵌めてみようか。心臓の上で温かくなった、二人を繋ぐ指輪。その温もりを確かめてみたい。  きっと光も、部屋に帰ってひとりになれば同じことするのではないだろうか。  単なる願望かもしれないが、俊也にはその予想は外れていない気がした。  まだ予定の一割も消化できていない。しかも、あくまでも「一年間ならば」の場合の。  それでもこの安心感は何だろう。ようやく顔を合わせて、目を見つめて話せたからか。目には見えない二人の繫がりを、改めて確認できたからなのか。  重要なのはあくまでも二人の想いなのは言うまでもない。  それでもこの細いプラチナの輪は、ふとした時に寂寥感に襲われる心の()(どころ)として、身体の距離を埋めてくれている。  ……だからもう少しだけ、待っていて欲しい。                               ~END~
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