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彼女が帰るまでの時間、在宅ワークをしながら待った。インターホンが帰宅を告げると、なんだか急にドキドキした。いまさらながら、なんだか照れ臭い。四十本のバラなんて、らしくないことをしてしまったようで……。
「本日は、おめでとうございます」
彼女がドアを開けた瞬間、そう言って出迎えた。
「え! 何? 何が始まるの?」
「とっておきのディナーでございます。さぁ、着替えてからリビングにお越しください」
そう言って、リビングのバラを見せないようにしながら、着替えてくるように促した。彼女が着替えている間に、作った料理を温め直して、テーブルにセッティングをした。
「どうぞ! お待たせしました」
「わぁ! すごい……真っ赤なバラ!」
僕の料理よりも、中央を彩る可憐な花に目を奪われた。
「四十本のバラでございます」
「四十本? 年の数だけってこと?」
僕は、微笑んだまま、首を横に降った。四十本の真っ赤なバラの花言葉を、ぜひ調べてほしい。
僕たちのところに、新しい家族は来なかった。でも、ふたりだって寂しくないし、幸せな未来が描ける。
これからもよろしくね。そんな思いをこめて。
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