今宵、真っ赤なバラを

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 朝から満員電車に揺られ、見慣れた景色が車窓を流れていく。なんでもない、いつもと同じ一日の始まり。片道約一時間かけて、都心のオフィス街へと向かう。梅雨の中休みか、今日はもうすでに真夏のように太陽が照りつけていた。  昼休みになり、同僚と外に出た。いつもは手作り弁当を食べているのだが、今日は特別。オフィス街の中にあるイタリアンでランチをした。十年来の付き合いである同僚から、サプライズでケーキをプレゼントされた。近くに居合わせた知らない人たちも拍手をしてくれて、歳をとるのも悪くはないな、と思った。  今日は、私の誕生日。もう四十回目になる。振り返ればいろんなことがあった。特にこの十年は……。いろいろ悩んだ。いろいろ泣いた。哀しい別れもあった。どうして私だけ、うまくいかないんだろう……と、自分を責めた。でも、もうそんなことはしなくて良い。諦めて、前を向いて歩いていくことを決めたから。  仕事が終わったら、急いで帰ろう。私の、たったひとりの家族が、待っていてくれるから。
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