第2話

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

第2話

雨佳の部屋へと向かう。 部屋の電気は消えているように見える。 それもそうだ、時刻は夜の10時を回っている。 ―ゴンッ!ゴンッ!― 勢い余って部屋を強くノックしてしまう。 父は困り果てた表情を浮かべ、立ち尽くしている。 少しして部屋の扉が開く。 「どうか、したの?」 呑気な表情を浮かべる雨佳。 「あ!こんばんは!こんな時間に申し訳ありません!着いたその日のうちに挨拶しておくものだと思いまして!突然で申し訳ないのですが、私の部屋、あなたですよね?荒らしたの」 雨佳は一瞬焦りを顔に出したが、直ぐにもとに戻った。 「な、なんの事かしら?私は体の調子が優れなくて、ずっと自室にいたのだけれど…」 言葉を遮る。 「ふざけるな!私の居場所を奪ったお前がそんな事をまだほざく気!?」 雨佳は言葉が出ていない。 私だって黙って言うことを聞く人間ではない。 言いたいことぐらいとことん言うタイプだ。 「梨舞…?」 「その名前で呼ぶな!」 廊下に響き渡る。 それでも、関係ない。 「舞耶に苦しい思いをさせておいて、まだ飽き足りないの?」 雨佳は足が震えている。 「いい加減、お前の思い通りになるのも懲り懲りなんだよ!」 雨佳は泣いていた。 父は雨佳を支える。 似たもの同士とでもいうのか、なんなのか。 私から見れば、哀れな2人だ。 「解放…してくれないの?」 隣の部屋の扉が開く。 「おねえ…ちゃん?」 舞耶だ。 私たちの声で起きてしまったのだろうか。 「舞耶…」 「お姉ちゃん!」 舞耶が飛びついてくる。 「ねぇ、舞耶…」 「なぁに?」 「舞耶…は、このままでいたい?」 突然こんなことを聞いて大丈夫だろうか。 「…お姉ちゃんが居なくなってからね…寂しかった…1人でこの家にいることが…」 「…そっか」 なんで帰らなかったんだろうか。 こんなしかない世界だからと言わずに帰ればよかった。 舞耶のいるこの家へ。 一生かけて後悔し続けるだろう。 仕方がないとは言えない。 思えもしない。 しかないこんな世界でも、この家でも、舞耶のためにこれからを注いでいこう。 「…望月」 「はい」 少し驚いたような顔を見せたが、望月が反応した。 「この家を半分に分割してちょうだい、管理は私がするから」 「かしこまりました。」 新しい日常を築いていこう。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!