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第2話
雨佳の部屋へと向かう。
部屋の電気は消えているように見える。
それもそうだ、時刻は夜の10時を回っている。
―ゴンッ!ゴンッ!―
勢い余って部屋を強くノックしてしまう。
父は困り果てた表情を浮かべ、立ち尽くしている。
少しして部屋の扉が開く。
「どうか、したの?」
呑気な表情を浮かべる雨佳。
「あ!こんばんは!こんな時間に申し訳ありません!着いたその日のうちに挨拶しておくものだと思いまして!突然で申し訳ないのですが、私の部屋、あなたですよね?荒らしたの」
雨佳は一瞬焦りを顔に出したが、直ぐにもとに戻った。
「な、なんの事かしら?私は体の調子が優れなくて、ずっと自室にいたのだけれど…」
言葉を遮る。
「ふざけるな!私の居場所を奪ったお前がそんな事をまだほざく気!?」
雨佳は言葉が出ていない。
私だって黙って言うことを聞く人間ではない。
言いたいことぐらいとことん言うタイプだ。
「梨舞…?」
「その名前で呼ぶな!」
廊下に響き渡る。
それでも、関係ない。
「舞耶に苦しい思いをさせておいて、まだ飽き足りないの?」
雨佳は足が震えている。
「いい加減、お前の思い通りになるのも懲り懲りなんだよ!」
雨佳は泣いていた。
父は雨佳を支える。
似たもの同士とでもいうのか、なんなのか。
私から見れば、哀れな2人だ。
「解放…してくれないの?」
隣の部屋の扉が開く。
「おねえ…ちゃん?」
舞耶だ。
私たちの声で起きてしまったのだろうか。
「舞耶…」
「お姉ちゃん!」
舞耶が飛びついてくる。
「ねぇ、舞耶…」
「なぁに?」
「舞耶…は、このままでいたい?」
突然こんなことを聞いて大丈夫だろうか。
「…お姉ちゃんが居なくなってからね…寂しかった…1人でこの家にいることが…」
「…そっか」
なんで帰らなかったんだろうか。
こんな色しかない世界だからと言わずに帰ればよかった。
舞耶のいるこの家へ。
一生かけて後悔し続けるだろう。
仕方がないとは言えない。
思えもしない。
色しかないこんな世界でも、この家でも、舞耶のためにこれからを注いでいこう。
「…望月」
「はい」
少し驚いたような顔を見せたが、望月が反応した。
「この家を半分に分割してちょうだい、管理は私がするから」
「かしこまりました。」
新しい日常を築いていこう。
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