第1話

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望月が私の部屋へ案内してくれる。 自分の部屋に入ると、内装は乱されていた。 いや、荒らされていたというのが正しいだろうか。 布団はシワだらけ 壁紙は剥がされ 机は傷だらけ カーテンは裂けている。 望月を見る。 困惑の表情を浮かべるが行動は早い。 「申し訳ありません。梨舞様。使用人の仕事が行き届いておりませんでした。早急に直しますので、1度応接間にて待機していただいてもよろしいでしょうか?」 「嫌だと言ったら?」 望月から「えっ」という声が漏れる。 つい笑ってしまった。 「嘘よ、望月。別にいいよ、荒らされているのは片付けをした後でしょう?」 望月は言葉が出ていない様子だ。 「まあ、これをやった奴もわかっている事だし、お父さんを呼んできて」 「片付けよりも先に、でしょうか?」 「うん」 「かしこまりました。」 そう言うと、早歩きで望月は父の元へ向かった。 2分ほどして、父が走りながらやってきた。 「梨舞!...一体、誰が...」 「ねぇ、お父さん、本当は誰がやったかなんて知ってるんじゃないの?」 またもや口を閉ざす父。 「別にいいんだよ?私が力を貸さなくてもいいんなら、だけど」 周りから見れば相当たちの悪い性格に見えるだろう。 けれど、私はそう思われたって構わない。 1秒でも早く、この家から消えてしまいたい。 ここは私の家じゃない。 そう思いたい。 「...これは、雨佳(うか)がしたのだろう。」 雨佳というのは、今の母の名前だ。 「なんで、そう思うの?」 「梨舞のことを嫌うやつなんて、この家には1人しかいないだろう...」 自分でも分かっているらしい。 「望月、直ぐに片付けやれるか?」 そう父が問う。 「この荒れ方ですので、早くて30分はかかるかと...」 申し訳なさそうに答える望月に私は答える。 「いいよ、30分ぐらい。というか、時間なんてどれだけかけてもいい」 「かしこまりました。すぐに片付けに入らさせていただきます。」 そう望月が言ったが、私はふと思いついた。 「まって、望月」 「梨舞、様?」 望月は戸惑っている様子だ。 「ねぇ、お父さん」 「なんだ?」 「これって、あいつがやったって言ったよね」 「ああ、」 「なら、この片付けあいつにさせようよ」 「だが、雨佳は体調が...」 父の言葉を遮る。 「こんな事しといて、体調が優れないので望月たちにやらせろって?ふっ、頭でもおかしいの?こんな事できるぐらいなら、十分体調なんて回復してるよね?」 父は戸惑っている様子を見せる。
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