ある三兄弟の思考を分析する日

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「はい」 『あ、マサちゃん?ママよ〜♡』 「!」 「!!」  電話相手――ママの声が聞こえたハジメとヤマサ。「げ」と眉間に皺を寄せ、マサシとのやり取りを聞いた。 「どうしたんだ、まだ病院じゃ……」 『終わったから帰るのよ〜。もう、ぎっくり腰なんて、最悪!自由に動けやしないんだから! あ、タクシー捕まりそう!雨が降るから、てっきり待つかと思ったけど、早く帰れそうね。 じゃあ、あと30分くらいで家に帰るわね♡待っててね♡』 ピッ  静かに電話を切ったマサシ。だけど、表情は全く穏やかではなく―― 「あと、」 「少しで、」 「帰ってくる!?」  お互いの青い顔を見た三人は、それぞれ洗濯物を目指して庭に出る。まるで特売の卵に群がる婦人のごとく、団子状態で三人は洗濯物へ手を伸ばした。  まずは、ハジメ。 「取った!」  と安堵した視線の先には、何故か女性ものの下着。ほぼ紐パンなそれは握りこぶしの中に隠せるほど、布の面積か少ない。  次に、ヤマサ。 「ぅおおりゃァァ!」  誰よりも意気込んで手を伸ばしたヤマサ。そんな彼が満を持して掴んたのは、男性用の下着。普段自分が履かないセクシー路線――いわゆるTバックだ。  先程ハジメが掴んだ紐パンと同じか、もしくはそれ以下の布の面積しかない。しかし、この状況では幸をなし、ヤマサもハジメ同様、握り拳の中にソレを隠した。  しかし一方で、二人のようにブツを隠せなかったのがマサシだ。彼は何に手を伸ばしたかというと―― 「これだけはー!!」  女の子のキャラクターが下着姿でプリントされている、大きなバスタオルだった。家族の洗濯物と洗濯物の間に上手く隠して干していたソレは、今やマサシの腕の中で、照れくさそうに存在を主張していた。 「……」 「……」 「……」  一同がそれぞれ、それぞれの隠したい物を見てしまった今。 「そんなもの家族の洗濯物に紛れて干すなや!!」と言いたいのを、寸でのところで我慢している。  そう、相手を干したら最後。今度は自分が、竿には干されずとも家族の間で干される番だからだ。  だが、この場から上手くフェードアウトする決定打がない。この場からしれっと退場したいのを、誰もが叶えられないでいた。  しかし、状況は突然変わる。  ポツ、ポツ……  まさに三人にとって「恵みの雨」と言わざるを得ない雨雲が、三人の頭上にやってきたのだ。 「あ、雨……」 「わー。ほんとだー、雨だー」 「濡れる前に入らないといけないな」  そして、各々の足取りで家の中に入る三人たち。鬼の居ぬ間に洗濯――三兄弟は、今日がまさに、その日だったのだ。  余談だが、雨に濡れる洗濯物を見て。帰ってきた母親が悲鳴を上げたのは、言うまでもなかった。 【完】
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