いち モブおじ先生の生活 

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 すぐに売りに出そうかと思ったが、興味が湧いて、ファンサイトなどで詳しく調べてみることにした。 『愛欲と傲慢DE偏見』  ゲームの舞台は、魔法が使える世界、ラブマジック王国にある魔法学園。  由緒正しき家柄の、貴族のご子息ご息女が通うこの学園は、一般的な学校とは少し違う。  入学年齢は十八から二十歳の間で選択できて、一年制の学校だ。  平民用にも同じような学校があり、国の人間であれば、必ず入らなければいけない。  いわゆる学問や魔法については、それぞれ貴族学校や平民学校で、十八歳までに学ぶことになる。  ならばなぜ、この学園に入学するかといえば、それはこの学園が主に恋愛を学ぶための学校だからだ。  かつて国民全員が性に関して奥手で、恋愛すら恥ずかしくてできないという状況になり、人口減少により、国家滅亡の危機に直面した。  そのため国は、適齢期の男女が恋愛と性の授業を行う魔法学園を創設して、入学を国民の義務とした。  ゲームの主人公は、バイオレット・レオニー。  平民だったが、貴族の家の養女となり、魔法学園に通うことになった。  平民時代、父親が貴族に作った借金が原因で苦しめられて、売られるように養女になったため、貴族に対して偏見を持っている。  そんなバイオレットが、魔法学園に入学して、様々なイケメン達と出会い、恋愛ゲームを繰り広げる。  一通り、詳しい内容を確認した後、イチローは起動確認も兼ねて、実際にプレイしてみることにした。  電源ボタンを押して、ソフトを挿入すると、タイトル画面になって、やけに明るい曲が流れてきた。  ぼんやりその画面を見ながら、コントローラーのスタートボタンを押した。  そこからの現実世界での記憶がない。  真っ暗な中で、ジェットコースターに乗ったように空に浮く感覚がして、気がついたら全く知らない場所に立っていた。  いや、全くではない。  ところどころ作りはおかしいが、よくある学校の教室というような景色だった。  教壇に教卓、黒板らしき物が見えた。  そして先生、と呼ばれて目を瞬かせると、そこには制服を着た学生らしき人達が、机を並べて座っていた。  まるでよくできた夢だった。  自分の手を見て、顔をつねったら痛みを感じて、わっと声を出して驚いた。
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