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古いゲームなので、ゲーム内の画像は鮮明ではなく、顔がよく分からなかったが、実際に見てみるとアイドルのような輝きで、周囲の女子生徒の中でも抜群に可愛かった。
「可愛さチート級ってか。こりゃゲームじゃなくてもモテるだろうな」
主人公は十九となっていた。
確かに可愛いが、ビリジアンからしたら、かなりの年下で娘と言っても過言ではない。
ここはモブとして、主人公の恋愛を陰ながら応援して、攻略対象者と結ばれるようにサポートを……
「するわけないだろ」
口に出してから苦笑してしまった。
ゲームの展開なんてどうでもいい。
主人公が誰と結ばれようが、勝手にしろという話だ。
この手の話にありがちな、主人公の恋愛が成就したら、元の世界に戻れるのだとしても、正直どちらでもよかった。
どちらの生活も身寄りがなく、孤独で気ままな独身生活であるし、ビリジアンの方がまだ職があるというだけ助かるというくらいだ。
「ふぁぁぁああ」
この後、入学式で職員紹介があるので、どうしても出席しなければいけないが、それが終わったら本気でここで寝ようとビリジアンは考えていた。
いつの間にか主人公は校門を通り抜けて、校舎の中に消えて行ってしまった。
ゲームのオープニングイベントを、最高の席で大あくびしながら鑑賞したビリジアンは、肩をぐるぐると回した。
ボキボキと骨が鳴る音が部屋に響いた。
「顔洗うか、さすがにこの顔で紹介されたら、悲鳴が上がりそうだ」
のっそり立ち上がったビリジアンは、ちょうどその時、外で歓声が上がったので目を向けた。
集まってきた女子生徒達が黄色い声を上げて、さかんに手を振っていた。
彼女達の視線の先、校門に颯爽と登場したのは、五人の男子生徒だった。
他の生徒とは別格の、後光を放って登場した彼らを見て、これはもう間違いないなと思ってしまった。
ビリジアンは、あぁあれかとまた一人で呟いた。
横一列に並んでいるのは、攻略対象者である五人組のイケメン集団で、五人は幼少期からの幼馴染という設定だった。
一番真ん中、一足先を歩いて一番注目を浴びているのが、この国の王子であるバーミリオンだろう。
目立つ赤い髪に青い瞳、ちょっと生意気そうな顔で強気な性格と書かれていたので間違いなさそうだ。
彼がメインシナリオのヒーローくん、ということになる。
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