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学園から徒歩十分の教師用の独身寮、木造二階建ての建物だが、現在入居者はビリジアンのみ。
そのため二部屋を使わせてもらい、実に広々と生活していた。
居住用の部屋のドアを開けたビリジアンは、これも現実世界のころと同じなのだが、誰もいない部屋に向かって、ただいまと声をかけた。
もちろん、返事をしてくれるような、可愛い奥さんなどいない。
この世界のいいところは、魔法がほぼ全てのエネルギー、動力となって、社会が成り立っているところだ。
魔力量には差があるが、どんな人間にも体内に魔力が存在する。
血液が作られるのと同じように、心臓で魔力が作られて体内に溜まる。
その魔力を利用して動く、様々な魔法具が開発されている。
部屋に灯りをつけたり、食事を作ったり、掃除をしたりといったことも、魔法具を使えば簡単に行うことができるのだ。
魔法には属性があるが、日常魔法具は属性に関係なく、自由に誰でも使用することができる。
魔力には限りがあるが、魔法具を使うくらいで無くなることはないし、なくなったら寝ればまた溜まるので、非常に便利で経済的な社会になっている。
無から何かを作り出すような、高度な魔法はできないので、食材を買うのにお金は必要だし、独身寮の家賃も給与の半分というかなりのぼったくり価格なので、暮らしていくのにお金は必須だ。
ビリジアンは部屋に置いてある魔法具の籠の中に食材を入れて、蓋を閉めて上部にある紋章を指でタッチした。
まるでボタンを押して調理するような感覚だ。
魔力が吸い取られて、しばらくすると食事ができている。
これを初めて使った時は、感動で大騒ぎしてしまった。
よく考えたら、電子レンジみたいなものだと、今では冷静に分析している。
調理ができるまで、ビリジアンは居住用の部屋を出て、隣の部屋に向かった。
「お待たせー、ジローちゃん、サブ、シロウ、ゴローくん」
声をかけると、暗闇の中で何かが、ピカピカと光った。
灯りをつけると、部屋全体を埋め尽くすように、積み重なったケージの中に、ゴソゴソと動く生物が見えた。
「お前達、お腹空いたろう。今準備するから、ちょっと待ってろな」
ビリジアンは、学園から持って帰ってきた袋の中から、赤い粉末を取り出した。
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